アメリカ空軍の教育機関である空軍戦争大学(Air War College)で教えるようになって4年になる。

 アメリカ南東部に位置するマックスウェル空軍基地の中にあるこの大学は、米軍の上級佐官(大佐と中佐)とその他政府関係者、そして海外40カ国以上からの留学生を合わせた、総勢約250人の厳選された学生で構成されている。

 卒業生のほとんどが戦略学の修士号を授与され次の任務に就き、その中には将来的に将官に昇進する人間もいる。

 空軍戦争大学という名前は、日本ではほとんど知られていない。日本では「戦争」と聞くと一般的に警戒され、ましてや戦争を教える大学となると信じられないネーミングだと思われるかもしれない。

 しかしここアメリカでは、将来の米空軍のリーダーを育てる、れっきとした上級軍事大学なのである。私はその大学で唯一の日本出身の教員として働いている。

 最近はその珍しい環境に慣れてきたが、最初の数カ月は軍隊のやり方に慣れるために苦労したのを覚えている。私のように軍隊経験もない、英語は母国語でもなく、民間の大学院から出たばかりの30代前半の若造が、40代で軍隊経験も20年ほどあるアメリカ人を相手にするのである。

 さらに、彼らの多くはイラクやアフガニスタンを含む世界各地での実戦経験を経ている。また、世界各地から来る留学生は全く異なる文化や言語を持ってくるため、多文化交流としてのチャレンジも存在する。

 このような環境で教えることは同時に様々な視点と格闘することを意味し、人間的にもタフになる。本コラム連載の1本目である今回は、そんな経験を踏まえて、空軍戦争大学がどのようなところかを書きたいと思う。

戦争大学とはどのようなところか

 私が担当している授業は毎年4つあり、アメリカ外交政策の決定過程、世界各地域の比較政治、日本を含む北東アジアの地域学、そしてアメリカの「アジアの世紀」と呼ばれる選択科目である。

 授業はその多くがゼミ形式を取っている。日本の大学でよく見られるような一方的な講義スタイルではなく、学生からのインプットを積極的に用いて教員が議論をリードする。従って、必然的に授業の過程で学生の専門性が発揮される。

 学生の専門分野は多岐にわたる。私が過去に教えた学生では戦闘機、爆撃機、ヘリコプターのパイロットはもちろん、軍医、兵站、警察、諜報、特殊作戦なども含むため、空軍全体の大きなピクチャーで物事を見、議論を深めていくことができる。

空軍戦争大学(Air War College)のシンボル(写真提供:筆者、以下同)