1 初めに

 中国による昨年末のADIZ(Air Defense Identification Zone=防空識別圏)の設定や南シナ海海域における拿捕をも可能とする漁業規則の施行等を見るにつけ、その傍若無人ぶりに驚かされる。

 日本はそれに対応すべく行動を開始したばかりであるが、間に合うのか、そして最終的に我が国の安全・安心は全うされるのか、危惧の念を抱かざるを得ない。

 本稿はそのような懸念をいかにして払拭するかについての述べたものである。激しい、厳しい表現もあり、感情的になっているとの批判もあるかもしれないが、筆者の思いの深さゆえと寛恕願えれば幸甚である。

 これまでJBpressにも多数の投稿してきたが、それらの集大成的意味合いもある。

2 最近の中国の覇権主義行動概要

 最近の中国の東アジにおける覇権主義的行動は目に余るものがある。その概要は以下の通りである。

(1)尖閣諸島

ア 尖閣諸島は核心的利益と明言

 従来台湾、チベットおよび新疆の独立問題など、いかなる代償を払っても譲歩しない、武力行使をも辞さないという意味に用いる常套句「核心的利益」なる文言を東シナ海・尖閣諸島に対して使うようになったのは2010年10月以降である。

 この時は東シナ海を国家領土保全上の核心的利益と規定しただけであったが、2012年1月には人民日報が尖閣諸島を核心的利益と表現した。

 中国政府や党は、尖閣諸島に対しては核心的利益との文言の使用を慎重に扱っていた。2012年5月の野田佳彦首相との会談時には「核心的利益と重大な懸案事項」と表現し、同年12月には中国政府高官が「核心的利益」と言明したとされる。

 そして、ついに2013年4月26日、中国外務省報道官が定例記者会見で尖閣諸島を核心的利益と明言し、同年8月には日本の超党派国会議員団との会談で、核心的利益と明言した。日本に対して明言したのはこれが初めてである。

イ 防空識別圏の設定と無人機の飛行

 中国は、2013年11月23日、突如尖閣諸島を含む東シナ海の上空広い範囲に、防空識別圏(ADIZ)を設定すると発表した。飛行計画の事前提出の義務化、識別や指示に従わない場合に「防御的緊急措置」を取ると明示した。中国はこのADIZを自国領空外側の緩衝地帯としてではなく、領空そのものと認識して対応しているものと考えられる。

 これより前、中国は、9月9日無人機と見られる航空機を尖閣諸島周辺公海上に飛行させ、我が航空自衛隊は緊急発進した事案もあり、我が国防空上の懸念が増大した。

ウ 実効支配を狙った態勢確立など

 中国初の空母「遼寧」を就航させ南・東シナ海海域に睨みを利かせ、対米作戦の布石を打った。我が国の海上保安庁に相当する国家海警局を発足させ、所謂公船を尖閣諸島接続水域や我が国領海に出没させ、我が海上保安庁を奔命に疲れさせている。