国会議事堂/前田せいめい撮影政府は新成長戦略に「総合取引所」構想を盛り込んだ(撮影:前田せいめい)

 政府は2010年6月18日に閣議決定した「新成長戦略」の中に、株式、先物、商品などを横断的に一括して取り扱う「総合取引所」の創設を盛り込んだ。これを受けて、大阪証券取引所の動向に注目が集まっている。社長の米田道生は、かねてより商品取引所との経営統合に意欲的で、大証の総合取引所化を悲願としている。

 大証は政府の方針を追い風に総合取引所の雄「シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)」を目指し、日本市場の起爆剤となるのか。それとも、自らを伝説の騎士と思い込んだドン・キホーテに過ぎないのか。東京・兜町の住人たちは米田から目が離せない。(文中敬称略)

イワシの大証、アピールに必死?

東京株、大幅続伸 日経平均終値413円高

「腐ってもタイ」の東証。NHKのニュース番組では、必ずTOPIX=東証株価指数の値が紹介される〔AFPBB News

 「東証は腐ってもタイ。大証はイワシ、泳いでいないとすぐ死んでしまう」──米田が、ことあるごとに繰り返す言葉だ。地盤沈下が激しいとはいえ、「TOPIX=東証株価指数」は毎日のニュースでも必ず取り上げられるし、世界の金融センターの一角としてそれなりに注目を集める東証。それに比べて、大証の存在感は圧倒的に薄い。「動き回らないと忘れ去られてしまう」という米田の危機感がにじむ。

 現在、日本には10の取引所がある。東京、大阪、名古屋、札幌、福岡の5証券取引所、東京工業品、東京穀物、中部大阪、関西商品の4商品取引所に、金融先物の東京金融取引所だ。

 商品分野別の取引所の壁を2013年度までに取り払い、全てを横断的に一括して取り扱うことのできる総合的な取引所創設──を目指すのが政府の総合取引所構想だ。新成長戦略では「アジアの資金を集め、アジアに投資するアジアの一大金融センターとして新金融立国を目指す」と宣言。1997年の日本版ビッグバン(金融制度改革)でも実現できなかった壮大な目標を掲げた。

 「取引所も金融サービス業。投資家と上場企業のことを第一に考えなければならない」──というのが、米田の信念。だからこそ、以前から、乱立する取引所の再編に意欲的だった。

 1つの取引所で、株の現物や先物だけでなく、金や小豆といった商品先物が買うことができる「金融版のワン・ストップ・サービス」が実現すれば、証券会社や商品先物取引会社など金融業者は取引所ごとに免許が許可を取る必要がなくなり、その分だけコストを下げることができる。それが手数料引き下げという形で投資家に還元されれば、新たな投資家層を呼び込むきっかけにもなり得る。