1 初めに

 12月17日、安倍内閣は、午前の国家安全保障会議(NSC)と閣議で、「国防の基本方針」に代わる歴史的文書とも言うべき、外交と安全保障政策の包括的指針となる「国家安全保障戦略」、新たな「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画(2014~18年度)」を決定した。

 安保戦略は、初めての策定であり、意義深いものであり、また防衛計画の大綱も厳しさを増す我が国周辺の安全保障環境に的確に対応することを狙いとした時宜に適したものであると評価し得る。

 本稿では、3点セットとも言うべき「新安保戦略」「新大綱」及び「中期防」の意義や特色を瞥見する。

 12月に創設された日本版NSCと新3点セットで、日本の安全保障は盤石になることが期待されるが、あと一歩の感なきにしもあらずである。それらを考察したい。

 いずれにしろ、今までのこれら計画が、どちらかと言うと曖昧な面を残し、いずれの国にも遠慮しながらの内容となっていた嫌いがあるが、今回は我が国の国家意思が明確に述べられているのが最大の特色である。

2 初めての体系的な国家安全保障戦略の策定

 旧態依然たる「国防の基本方針」(昭和32年制定10行余り4項目のみ)から脱却して、我が国の理念→国益の検証→国家安全保障の目標の設定→安全保障上の課題摘出→対応策の策定という一連の戦略的アプローチで戦略を策定したのは、極めて意義深い。それだけにボリュームもA4版32ページと、国防の基本方針とは比較にもならない。

 さらに、戦略をより具体化する形での防衛計画の大綱の策定、そしてそのマイルストーンである中期防の決定という体系的な枠組みが確立された意義は大きい。

 また、本戦略の指針は、外交・防衛にとどまらず、国政全般に及ぶものとされていることも画期的である。すなわち、本戦略は国家安全保障に関連する分野はもちろん、国のほかの政策実施に当たっても国家安全保障上の観点を考慮するように求められており、我が国もやっとまっとうな国になったと言うべきだ。

 修正・見直しについても明確に記述しており、国際情勢などは変化するものであり、それに柔軟に対応するためにも、必要な記述と言えよう。

3 理念としての「積極的平和主義」:責任を持って果たせ!

 一国平和主義と揶揄された従前の原則から脱却し、国際社会において、相応の役割を果たすことを国際社会に闡明し、理解を得ようとしている。

 国際社会とアジアの平和と安定に積極的に関与しようという方向性は、日本の置かれた立場や国力、今までの実績から妥当なものであり、日本が責任ある役割を果たすことは、一部の国を除いて、幅広い支持と理解が得られよう。