特定秘密保護法案では、安倍晋三首相の決意が示された。マスコミが騒いだようにこれが日本を「戦争への道」に導くことはありえないが、それほど緊急を要するとも思えない。施行は1年後なのだから、何のために臨時国会でバタバタと決めたのかよく分からない。
それより急を要するのは、全国の原発を止めたまま、毎日100億円の燃料費が浪費されている状況だ。2013年の貿易赤字は史上最大になる見通しで、このまま放置すると「アベノミクス」効果も吹っ飛んでしまう。
しかし安倍政権は原発に手をつけられない。それは東京電力の経営問題という懸案が宙に浮いたままになっているからだ。政府は、どこでボタンを掛け違えたのだろうか。
なぜ原賠法の「第3条但し書き」は適用されなかったのか
福島第一原発事故で、東電は巨大な賠償債務を負った。当初、多くの関係者が考えたのは、原子力損害賠償法のいわゆる第3条但し書きの適用だった。
第3条(無過失責任) 原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
東日本大震災がこの「異常に巨大な天災地変」に当たるかどうかが争点だったが、それまでは「関東大震災の3倍以上」という基準が想定されており、震災のエネルギーはこの基準をはるかに上回ったので、但し書きが適用されるものと思われていた。