フィリピン中部を11月初旬に襲った台風30号(ハイエン、フィリピン名ヨランダ)は、未曾有の被害をもたらした。台風によって多数の人命が奪われたほか、インフラが破壊されるなど、被災地の復興には時間がかかるとみられる。さらに、フィリピン経済全体への影響も懸念されている。

 そんな中、注目されてきているのが、海外で働くフィリピン人出稼ぎ労働者による祖国への送金だ。

 出稼ぎ大国のフィリピンでは毎年、海外からの送金額が国内総生産(GDP)の1割程度に上る。そのため、台風被害からの復興に当たっても、海外のフィリピン人出稼ぎ労働者による送金の存在感が大きいとみられているのだ。

 フィリピンの台風被害と、送金の動きを追ってみたい。

想像を絶する被害の大きさ

フィリピン台風、墓場から流し出された遺体

台風30号の被害を受けたフィリピン中部・東サマール州ヘルナニで、流された親族の墓石を捜す住民(〔AFPBB News

 台風によって破壊され、水浸しになった集落。そして、倒壊した住宅と行き場を失くした人々――。インターネットで検索すると、今回の台風30号によって甚大な被害を受けたフィリピン中部の画像が多数ヒットする。

 こうした画像にアクセスすることは、さほど難しくはない。検索すればすぐになにがしかの画像がヒットするし、メディアの報道でも多数の映像や写真が使われている。

 ただし、その画像が映し出す状況を受け入れるのは、生易しいものではない。被災地のあまりに深刻な事態をすぐに理解することは難しく、その状況を見て呆然としてしまう。新聞、テレビ、ネットなどの報道を通じてフィリピンの被災地の映像や写真に触れ、胸を痛めている読者も少なくないだろう。

 台風30号は、フィリピン中部のレイテ島やサマール島などを直撃し、多大な被害を出した。犠牲者数はまだ正確には分かっていないが、相当数の人が亡くなったり被災したとみられている。

 また、被災地では、食料、水、医薬品などの物資が不足し、多くの人が飢えや病気といった2次被害に遭っているとも伝えられている。さらには、物資の略奪行為が発生するなど、治安の悪化も指摘されるなど、被災地の置かれた状況はあまりにも過酷だ。

 そんな中、米国や日本など各国や国際機関、NGOなどが現地で、支援活動に当たっている。日本からは自衛隊が大々的に派遣されているだけではなく、個人や企業が義捐金を送るといった動きも出ている。

 ただし、このような国際社会の協力があっても、台風被害の大きさから、復旧には相当の時間がかかりそうだ。

フィリピン政府がGDP伸び率予測を下方修正

 今回の台風は、被災地の住民生活だけではなく、フィリピン経済全体にも大きな痛手となるとみられている。そんな中、フィリピン政府は経済見通しを見直した。

 フィリピン国家経済開発庁(NEDA)は11月15日に発表した声明で、同国の2013年第4四半期(10~12月期)のGDP伸び率が4.1%に減速するとの見通しを示した。上半期のGDP伸び率は前年同期比7.6%の高い伸びを確保したものの、台風を受けて第4四半期は大きく低迷するとの見方だ。