今回の原稿は北京・中関村にある某有名大学の宿泊施設で書いている。11月17日から6日間、まず上海・蘇州で友人の仲間と意見交換した後、蘇州から北京行の「和諧号(中国版新幹線)」に飛び乗った。北京では大学生を前に英語で講義したり、主要シンクタンクを回って意見交換を行い、実に勉強になった。

 筆者にとって中国で頑張っている日本人や北京の中国人知識人から聞く生の話は何よりも貴重だ。本来ならお休みを頂く週なのだが、今回はせっかくの上海・蘇州・北京出張でもあり、最新のスナップショットを文章にして残しておきたいと考えた。暫くの間、筆者の独断と偏見にお付き合い頂ければ幸いである。

意外(?)にしっかり走る新幹線

速すぎた開発、中国の高速鉄道

中国版の新幹線〔AFPBB News

 筆者が蘇州から飛び乗った新幹線は上海虹橋駅から北京南駅まで5時間半で走ったが、もっと速く4時間台で走る列車もあると聞く。時間の違いは途中の待ち合わせの回数の違いだそうだ。友人からは事前に「車内は騒がしいけど我慢しろ」と警告されたが、周りの乗客は拍子抜けするほど静かだった。

 値段は一等座(日本式ではグリーン車)で片道933元(1万5000円程度)。安くはないが、飛行機とあまり変わらない。空港に2時間前に行って、到着後タクシーを利用することを考えれば、5時間半の新幹線もあまり苦にならない。さらに値段は高いが、座席がほぼフラットになる「ビジネス座席」というのもあった。

 中国の新幹線というとやはり事故を連想する。筆者もこの点ではミーハーで、初めはちょっと怖い気もしたのだが、乗ってみれば意外に快適だ。電源はあるし、最高速度は時速305キロ、日本の新幹線と比べても決して見劣りはしない。

経済リスクよりも政治リスク

 車窓から外を見ると、時折農地のど真ん中に高層ビル群が忽然と現れる。半分は建設中だが、半分は空き家のようだ。なるほど、これが有名な「鬼城」と呼ばれるゴーストタウンなのだろうか、と妙に納得した。あんな所にマンションを建てて中国経済は一体どうなるのだろう。他人事ながら心配になる。

 経済と言えば、上海と蘇州では現地で頑張っている日本人ビジネスマンを紹介してもらった。10年前と比べて感じるのは、業種を問わず、各社とも以前にも増して優秀な人材を本気で投入していることだ。いずれも2012年9月の反日暴動を生き抜いたツワモノたち、さすがに中国経済をよく見ていると感じた。

 個々の意見交換の詳細は書けないが、少なくとも三中全会の決定に関する評価について彼らの印象は筆者のイメージに近かったように思う。

 要するに、中国経済のリスクは、経済的リスクではなく、政治的リスクであるということ。結局のところ、中国経済のポイントはこれに尽きるだろう。