冷戦終了後四半世紀、日本をめぐる安全保障環境は大きく変化しつつある。

 大陸勢力の雄、中国は、その経済成長とともに、軍事費を逐年増大、軍の近代化を進め、なかでも海軍を増強し、東・南シナ海から太平洋へと海洋進出を企図している。

冷戦時代よりも日本への脅威は増した

北朝鮮崩壊に備え「米中の境界線決めよ」、米シンクタンク

北朝鮮の金正恩第1書記〔AFPBB News

 また朝鮮半島では、北朝鮮が3代の世襲独裁政権のもと、核開発とその運搬手段たる弾道ミサイルの開発と実験を繰り返し、その能力を高め、日本を射程に収めるとともに、やがて米国本土まで脅威を及ぼす勢いである。

 北方に目を転じれば、大陸勢力の他方の雄、ロシアは北方領土の経済開発を進め、実効支配を強化している。

 さらに、科学技術の進歩は著しく、遠隔操作無人機を主体とする作戦、電子空間を使ったサイバー戦が登場してきた。また、9.11事件以降、人と爆薬による原始的な無差別テロは後を絶たない。

 現在の世界情勢を勘案すると、米国を中心とする自由圏とソ連を中心とする共産圏が対立していた冷戦時代よりも、我が国への脅威が現実味を帯びつつあるのではなかろうか。

 今や、日本の安全保障問題は、好むと好まざるにかかわらず、国民一人ひとりが直視し、自らのこと、さらに将来世代のこととして考えるべき転機にある。

 安倍晋三政権成立後から、政府は厳しさを増す北東アジアの安全保障環境を考慮し、集団的自衛権行使について、憲法解釈(権利は有するが、憲法上行使することは許されない)の見直しを政治日程に乗せようとしているのは適切である。

 集団的自衛権の行使は、日米安保条約の信頼性をより一層高めることに貢献し、さらに価値観を同じくする海洋国家たるアジア諸国との連携も視野に入れるものである。

 そもそも、国際連合憲章に明記された集団的自衛権は、大国の拒否権行使の専横を防止するため、軍事的に劣る米州諸国が相互に連携し集団として防衛するチャプルテペック協定を基本としている。