前回に引き続き、第7世代のフォルクスワーゲン・ゴルフ(以下「ゴルフ7」)の「クルマとしての実力」について、私自身が実車を走らせて体感し、分析した内容をお届けする。

 “味見”したのは、現状で日本市場に投入されている基本仕様2タイプ。まず1.2リッター過給エンジンを搭載し、リアサスペンションがいわゆるコンパウンドクランク形態のトーションビーム方式(左右連結・半独立型)となる「コンフォートライン」、もう1つが1.4リッターにターボ過給を組み合わせる一方、負荷が小さい状況では4気筒のうち2気筒を「休止」させる機能を実装しただエンジンを搭載、リアサスペンションにはダブルウィッシュボーン形態の独立懸架を組み込む「ハイライン」である。

 今回は、私がクルマの「動質」において「力の実感」以上に重視しているフットワーク、身体と一体に馴染んで路面を踏み、揺れ、ラインをトレースし、コーナーを駆け抜けてゆく資質について話を進めたい。

 この面に関しては、先代ゴルフ6の、それも最もベーシックな1.2リッターの「トレンドライン」の、さらにモデルライフ後半の2011~12年仕様が極めて優れた資質を有していた。現時点における乗用車の、あえて付け加えるならいわゆるスポーツモデルまで含めたクルマたちの「ベンチマーク」(評価の基準となる「物差し」)となる存在、と私自身は、そして動質の評価を専門にする我が仲間たちは判断している。

 もちろん新しいゴルフ7は、まさに熟成が進んだこの先代の後期型と直接比較されることになる。

「自然な手応え」が失われた電動パワステ

 私自身が最初に感じた「?」は、ステアリングの感触だった。

 ゴルフは第5世代から電動パワーステアリング(EPS)を使っている。ドライバーの手からタイヤに至るステアリング機構の中に電動モーターを組み込み、その回転力を操舵保舵のアシスト力にするEPSは、本来なら操舵機構を押してやるだけでよいはずの「倍力」を作るメカニズムとしては非常に難しい。それは様々な要因があるのだが、簡単に言えばモーターの中でかなり重い回転子を回し、止め、逆転させる動きが、手に伝わってしまう。それは人間にとっては「本来あるべきものではない」感覚であり、クルマとの対話の中で自然に現れるはずの身体反応をスポイルしてしまう。それを何とかしようと様々な「補正制御」を加えるのだが、それが逆効果となることも少なくない。

 こうした大きな弱点を抱えたEPSは、燃費向上のための装備として一般化しているが、排ガスと同時に燃費の数値を測るための台上試験ではまったく舵を動かすことはないのであって、エンジンが操舵倍力装置のためのポンプなどを駆動しなければ消費エネルギーは「ゼロ」になるからその効果ははっきり表れる。しかし現実の走行の中では直進状態でも微妙にステアリングに力を加えることが頻繁に繰り返されるし、もちろん舵を動かせば電力を消費する。