2009年3月、ニューヨーク。メディアストリーミングのBOXEEのアブヌー・ロナン(Avner Ronen)CEOが断言していた。
「ケーブルテレビは、インターネットが出現する以前のビジネスモデル。消費者ニーズにマッチしていない」
隣にはケーブルテレビの最大手、コムキャストのパネリスト。
「そんなことはない。いまでも何百万人ものカスタマーを抱えている」と、激論を交わしていた。
ライバル同士が観客を前に議論を戦わせる姿に衝撃を受けた(参照:筆者のブログ「ロックメディア」2009年3月掲載)
ケーブルテレビは時代遅れと決めつけていたBOXEEだが・・・
あれから、4年。
この7月、そのBOXEEがサムスン電子に買収された。買収額3000万ドル以下。ちょっと安くない?(参照:TechCrunch、2013年7月4日付)
BOXEEは、最初、インターネット動画をリビングのテレビに映し出すパソコン用のプログラムだった。ニューヨークのメディアサミットの3カ月前にラスベガスで行われた家電見本市の CES 2009 で「スゴイ!」と思ったが、素人にはインストールが難しすぎてできなかった。
その頃すでにHuluはベータサービスを開始してから2年経っており、BOXEEユーザーの大半は、パソコンで受けたHuluをテレビに映し出すためにBOXEEを使っていた(2009年2月、HuluはBOXEEとの接続をカットすることになる。親会社のテレビ局の意向だ)。
その後BOXEEはウェブサイトを開設、番組にチェックインしてコミュニティーを作って遊ぶソーシャルテレビ的なサービスを開始した。
ニューヨークで、ロナンCEOは「まだ会員は20万件。今年中にメーカーなどにソフトウエアをOEM提供したい」と語っていた。イノベーティブなコンセプトに共感するユーザーは増えていたが、マネタイズの手法に悩んでいる様子が窺えた。
半年後、2009年11月ロサンゼルス。今度はBOXEEの別の幹部が話していた。
「BOXEEはハードメーカーではなくソフトウエアに特化する」(参照:筆者のブログ「ロックメディア」2009年11月27日付)