今回の参議院選挙の話題の1つに、ワタミの創業者、渡邉美樹氏の出馬がありました。ワタミは、いわゆる「ブラック企業」の代表格とされ、あまり良い評判を聞きません。渡邉氏を公認した自民党内でも、彼を公認候補にしたことには異論もあったようです。

 結果は、自民党が圧勝した選挙だったのにもかかわらず、朝方まで当確が出ない、ぎりぎりの当選でした。

なぜ渡邉氏だけが叩かれるのか

 <お追従者から身を守る手段は、真実を告げられても決して怒らないと人々に知ってもらうしかない。ところが、そこで、だれもがあなたに真実を話してかまわないとなると、あなたへの尊敬の念が消えてしまう>

(『君主論』、マキアヴェリ著、池田廉訳 中公文庫)

 渡邉氏は、大学卒業後、給料も高いが重労働もすごいと評判を取っていた佐川急便に入って資金を作り、起業した人です。

 私の独断と偏見で言わせていただければ、面構えはサービス業に最適化されています。言い換えると、「サービスのプロ」になろうとしてきた人の顔をしています。

 彼はそうした姿勢を、おそらく社員にも求めたのでしょう。「24時間365日、死ぬまで働け」など、いかにも言いそうなタイプの経営者です。そんな経営者は他にもたくさんいるのに、なぜ自分だけが叩かれるのか、おそらく彼は相当な不満を持っているでしょう。

 なぜ叩かれるのか? 私に言わせれば、その理由は簡単です。渡邉氏の言動には言行不一致があまりに多いからです。そして、それを指摘して修正したり、イメージの悪化を防いでくれたりするようなブレーンがいないからです。