7月2日、バイコヌール宇宙基地から打ち上げられた「プロトン-M」ロケットが、発射直後に墜落するという事故が発生した。

 午前8時38分、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地の第81号発射台から打ち上げられたプロトン-Mは、その数秒後に姿勢を崩し、東に向かって水平飛行した後に炎上・分解しながら地上に落下した。

数百トンの有害物質で汚染された落下地点

ロシアの無人ロケット、打ち上げ直後に爆発

ロケットの爆発をテレビで見る人〔AFPBB News

 ロシア側の報道によると、発射の直後にエンジンの1基が不具合を起こしたが(プロトン・シリーズの第1段目は6基のエンジンを束ねた構造になっている)、発射台直上で爆発することを避けるためにエンジンは点火後42秒間、停止できない構造になっていたため、姿勢を崩しながらも飛行を続けたようだ。

 実際、ロケットの落下地点は数百トンの有毒なUDMH(非対称ジメチルヒドラジン)で汚染されているというから、発射台上に落下していれば爆発と汚染とでバイコヌール基地は大損害を受けることになっただろう。

 また、この事故では幸いにも死者やけが人を1人も出さなかったが、1996年に発生した長征3Bロケットの打ち上げ失敗事故では村が丸ごと1つ消滅したと言われており、今回はただ幸運であったと言うほかない(実際、バイコヌール基地から最も近い都市は60キロほどの距離にあり、ロケットの打ち上げが失敗すれば直撃の可能性は十分にある)。

 もちろん、このような不幸中の幸いは喜ぶべきことではあるが、大惨事であることには変わりはない。

 何より、今回の失敗でプロトン・シリーズ、そしてロシアの宇宙アクセス能力に対する信頼性は大きく揺らいだ。

 確かにプロトン・シリーズは初期(1960~70年代)に失敗を繰り返したものの、その中で技術的信頼性を高め、近年では世界で最も信頼のおける宇宙輸送手段と見なされていた。

 特に2000年代(2000~09年)には10年間で実施した82回の打ち上げのうち、失敗はわずか4回(打ち上げ成功率は約95.1%)という成績を挙げている。

 一方、2010年代に入ると、今回と同じように3基のGLONASS衛星を積んだまま打ち上げに失敗する事例など、2012年までの3年間で3回の失敗(うち1回は部分的失敗であり、衛星の軌道投入には成功)が発生した。