ドイツの5月は雨ばかりだった。周りの人間に、「こんな5月は30年来、初めてよ」などと話していたら、なんと、30年どころか、1881年以来、2番目に降水量の多い5月だったそうだ。

 1881年といえば、ビスマルクもワーグナーも生きていた時代だ。でも、「そうか、この憂鬱な5月を彼らも味わったのか」と思っても、たいした慰めにはならない。

春を迎えるイースターに雪、雨ばかりの5月、異常気象が続くドイツ

 そういえば、今年は冬もひどかった。ドイツの冬はおおむね薄暗いことは承知しているが、だからといって全く太陽が出ないわけではない。晴れの日もある。ところが、去年から今年にかけての冬は、少なくとも私のいる南ドイツは、60年ぶりと言われたほど太陽の出ない冬だった。

 そのうえ、その鬱陶しかった冬が終わっても、なかなか春にならなかった。4月末からハンブルクで開催されている国際ガーデンショーも、当初、霜やら霙やらで、花どころではなく、関係者はとても困ったらしい。

 イースターは、春の訪れを告げる季節なので、皆がクリスマスと同じぐらい楽しみにしている祝日だが、今年は4月の初めのその頃、ドイツ各地で雪が降っていた。雪のイースターは異常だ。私は、4月は日本にいたが、日本も例年になく寒かった。しかし、ドイツはもっともっと寒かったのだ。

欧州中部、集中豪雨で洪水 4人死亡

記録的な集中豪雨に見舞われた欧州中部(6月2日ドイツ南部テガーンゼーで撮影)〔AFPBB News

 そして、5月は雨、雨、雨。ときに雪! 5月末には北ドイツの一部で床上浸水が始まり、その後、たっぷり水に浸かった地域が全土に広がった。

 洪水というのは竜巻のような危険さはないが、暗い空から非情な雨が降り続き、じわじわ水位が上がってくるし、家の前の道が濁流のようになるし、とても恐ろしい。まるで心理テロのようだ。

 必死で玄関に土嚢を積み上げたにもかかわらず、応接間のテーブルやソファがプカプカ浮いている映像などを見ると、気の毒でたまらなくなる。

 ドイツの家は、たいてい地下に貯蔵室やボイラーなどがあるので、それらはすでに水浸しということになる。一度水を吸った地下室の壁は、工事現場にあるような乾燥機を入れて乾かさなければ、なかなか元には戻らないから、後始末は難儀だ。