日中関係が行き詰まりを打開できない中、米国と中国は着実に対話を重ねている。北朝鮮の挑発という、米中が共同で対処すべき課題が両者を結び付けているが、米中には共通する利害も相反する利害も共に存在する。
オバマ政権の外交・安保面でのアジア回帰(リバランス)、中国排除の自由貿易枠組みとしてのTPPの推進などが中国にとっての懸念事項であることは間違いないにせよ、だからといって米国が中国との抗争を求めているわけではない。台頭する中国との協調は東アジア国際環境の安定に不可欠だからである。
中国も2012年2月に訪米した習近平副主席(当時)のスピーチで、「中米両国は共同利益と互恵協力を拡大し、両国の協力関係を21世紀の新型大国関係に作り上げる」と発言して以来、米中の「新型大国関係」を外交戦略のキーワードとしてきた。
カリフォルニアの保養地で米中首脳会談を開催
4月13日のケリー国務長官の訪中を皮切りに米中の対話が進む中で、6月7~8日に習近平主席の訪米と米中首脳会談が開催されることが5月21日に報じられた。首脳会談が開催されるのが首都ワシントンではなく、カリフォルニア州の「サニーランズ」という保養地であることから、儀礼を廃した実務会談が想定される。オバマ大統領にとって、中国のニューリーダーを品定めする場となる。
すでに触れたように、習近平主席は2012年2月にも訪米しているが、当時は国家副主席の肩書きで、バイデン副大統領の招待によるものだった。秋の党大会で党総書記就任を控えていた時期でもあり、この時の訪米は「安全運転」に徹していた。今回、オバマ大統領との首脳会談に臨む習近平主席は、中国の国家・党・軍のトップとして、世界の超大国・米国の大統領と対等な「新型大国関係」の構築を目指すことになる。
6月の米中首脳会談でどのような成果が予想できるのだろうか。日本の頭越しに中国が主張する「第2次大戦後の国際秩序の尊重」で米中が合意し、尖閣諸島問題で中国を利するようなことは起こり得るのだろうか。
ケリー国務長官の訪中以降の米中関係は、中国との「協調」を前面に出す国務省と、「対抗・脅威」を示す国防総省のコントラストがあらわに出た。
例えば、ケリー国務長官は訪中時に、中国の言う「新型大国関係」を念頭に置いて、「中国と米国という2大国が様々な問題を解決するためにどのように効率的に協力していくべきか、協力関係のモデルとしていかにあるべきなのかを定義するため、広範囲にわたる協力関係を開始したい」と述べていた。