新宿駅東口アルタ前を伊勢丹方面に歩き、ちょうど三越の前を左に切れ込むと、新しくなった映画館、新宿ピカデリーに出る。

 通常シネコンプレックスは郊外のショッピングモールに広く横たわっているが、新宿通りと靖国通りに挟まれた都心の新宿ピカデリーは、横に拡張する土地があるわけでもない。この都心型シネコンプレックス、最上階は11階。

 普通、映画館というとちょっと閉塞感があるが、この11階から見える景色は開放感があって綺麗。新しいタイプの映画館である。

 その新宿ピカデリーで映画『ハーブ&ドロシー』をやっているというので見てきた。 

厖大な現代アートコレクションを寄贈した「ハーブ&ドロシー」夫妻

映画『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』の前売りチケット(著者撮影、以下同)

 映画の主人公は、ニューヨークに住むボーゲル夫妻(Herbert & Dorothy Vogel ――つまりハーブ&ドロシー)。彼らがなによりスゴいのは、コンセプチュアルやミニマルといった現代アートを、誰も評価していない黎明期から収集している点である。

 彼らは資産家ではない普通の夫婦。図書館司書のドロシー(妻)の給料を生活費にあて、郵便局員であるハーブ(夫)の給与はすべてアート購入にあてた。

 そして、いまでは総額何十億ドルもの価値を持つようになったコレクション4000点を、無償で美術館に寄贈してしまう。

 なかなかデキない。

 ワシントンのナショナルギャラリーに寄贈したコレクションは、さらに全米50州の美術館に50点ずつ寄贈されるという。

 このプロジェクトを追って、ニューヨーク在住の佐々木芽生氏が映像に収めたのが、映画『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』である。前作も面白かったが、今回の作品も面白かった。

“なんじゃこりゃあ”が現代アートの役割

 ボーゲル夫妻が買い集めた現代アートは、コンセプチュアルやミニマルと言われるジャンルに特化している。

 コンセプチュアルは、作品の「コンセプト」そのものがアートという考えに基づくジャンル。ミニマルは、シンプルなアート。ノートの切れ端になぐり描きされた水彩画、パリのポン・ヌフ橋を梱包するアート、展示する方向が決まっていない(上下左右自由に飾ってよい)絵などなど・・・。