私たちはなぜ、政治に参加しようと思わないのでしょうか。

 「毎日の生活で忙しくて時間がない」「政治はよく分からない」「何をやっても政治は変わらない」

 政治に対するこのような市民の感覚は、日本だけでなく他の国でもあると思います。私が今いるアメリカでは市民の政治参加への意識の高さは感じられますが、やはり同じような思いを多くの市民は抱いています。

 ならばそこを変えればよいと、政治を簡単で楽しく参加しやすいものにするイノベーティブな取り組みをしている人たちを今回は紹介したいと思います。

資金力が二極化し、幅広い市民参加を阻むアメリカの政治

 ハーバード・ケネディ・スクールでは7年以上社会人としてのキャリアを積んだ人を対象としたミッドキャリアプログラムがあり、私はそこに在籍していました。

ハーバード・ケネディ・スクールのクラスメイトと。アメリカやカナダはもとより、コートジボアール、ナイジェリア、メキシコなど、さまざまな国から学生が集まる(写真提供:筆者、以下同)

 生徒の年齢は30代から60代まで、留学生比率は65%という非常に多様性のあるプログラムで、政治や公共政策に深く関わっていた政治家や官僚もいれば、民間セクターなど違う分野から公共セクターにシフトし、今までの職業経験を生かして異なる視点から政治にアプローチしようとしている人もいます。

 アメリカ人のクラスメイトのタルマージはシリアルアントレプレナーという、いくつもの事業を次々と立ち上げる起業家で、金融、映画会社、銃規制のNPOなど幅広く起業に関わってきました。

 タルマージが持っていた問題意識はアメリカの常規を逸した高額な選挙資金と、それに群がる規制のない企業献金でした。

 そういった高額の資金を集められるのは一部の政治家だけで、地方レベルから全国区まで約80万人いると言われる立候補者の90%は、自分のウェブサイトを立ち上げることもできないでいます。