新しい年を迎えて、世界の自動車業界がまず動き出すイベントがいわゆる「デトロイト・オートショー」、正式にはNorth American International Auto Show:北米国際自動車ショー、略して「NAIAS」)である。

メディアデーにGMブースのステージで披露された新型シボレー・コルベット。ちょうどフルモデルチェンジのタイミングを迎えていたわけで、社会の気分が変わったから投入したわけではないけれども、「クルマはやっぱりエキサイティングでないと」という人々の思いからして、「ショーの華」であることは間違いない。写真提供:GM

 今年も1月14~15日が「メディアデー(報道関係者招待日)」、16~18日が業界関係者に向けた公開日、そして19~27日が一般公開日と、2週間にわたるスケジュールで開催されている。

 例年、この時期のデトロイトは寒くて、五大湖のヒューロン湖からエリー湖へとつながるデトロイトリバー(対岸はカナダ)は結氷し、ホテルの部屋に入ると窓ガラスの外面が終日凍結したまま、などということも珍しくない。息を吸うだけでも胸がキュッとするような寒気の中を歩いて広大な会場、コボ・ホールに入るとしっかりと暖房が利いていてホッとするが、今度はコートを重ね着したままでは暑い・・・。デトロイト・オートショーの印象としてはこの「寒さ」がまず脳裏によみがえる。

1954年モデルとして登場して以来、6代にわたる歴代のコルベットと、「C7」というコードネームで呼ばれる最新の2014年モデル。アメリカのクルマ文化を象徴する存在であると同時に、「C5」(後列左から2台目)からは主骨格を大径鋼管を成形型に収めた内部に高圧の水を注入、一気に成形する「ハイドロフォーミング」を採用、スポーツカーとしての「動質」においても世界の「今」を代表する一車になっている。写真提供:GM

 私自身は最近、デトロイトを含む海外のオートショーの取材はすっかりご無沙汰している。何よりインターネット上でほとんどの情報が入手できるようになったことが大きい。以前は、ショーの会場で一つひとつ展示ブースを巡り、「プレスキット(広報資料一式)」を受け取り、スライドや紙焼きの写真もたっぷり入ったそれらをプレスルームで選り分けて、記事を作るのに今すぐ必要なものは手荷物に、それ以外は箱詰めにしてショーの会場に設けられている国際宅配便のカウンターに持ち込む・・・という作業に多くの労力を費やしたものである。それはそれで面白いし、「何が出展されて」「どんなコメントがあったか」を記憶に残すことに直結するのだが、でも肉体と、そして財布の中身への負荷は大きい。

GMの大型ピックアップトラック、シルバラードも2014年モデルでモデルチェンジ。V8エンジンは軽負荷走行時には片側4気筒を休止するメカニズムを導入。以前から試みられているものだが、最近では制御も進化して気筒休止から作動への切り替えも滑らかに行われるはずである。写真提供:GM

 ところがいまやほとんどの自動車メーカーが報道関係者向けの「メディアサイト」を持ち、プレスリリース(報道発表資料)や車両の資料、デジタル写真や動画まで、ディスプレイで確認し、ハードディスクにダウンロードすることができる。ショーの現場でプレスキットを配布せず、このダウンロード提供だけにする企業も増えてきた。

 もちろんニューモデルの現物を見て触れることで得られる情報は多いのだが、そうなると私としては「乗って」「走らせて」みないことには、クルマの資質を判断するには至らない。「見るだけ」ならば写真や動画が豊富にあれば、特に私の場合、技術関連の資料や画像を入手できれば、おおよその内容を把握することができる。かくして、デトロイトの寒気に身をさらすことからはすっかり遠ざかっているのである。