大津のいじめ事件は、昨年多くの人が関心を持った事件の1つです。いじめなどの不祥事を学校が隠蔽しようとしても、事件にまで発展したらまず逃げ切ることはできない。教育関係者は、それを思い知らされたはずです。
にもかかわらず、桜宮高校の事件でも体罰の隠蔽が行われました。批判に晒されるのは誰でも怖いし不愉快ですから、隠蔽したくなる気持ちも分かります。
しかし、教育者がそうした態度を取ることがどのような教育効果を子供に与えるのか。不祥事が表面化し、記者会見などの場で「知らなかった」などとみじめな言い訳を続ける校長らの姿は、子供にとってこの世の仕組みを教えてくれる、たいへんよい教材だと言えましょう。
交戦を避けて逃げ回ったファビウス
<敵があらゆる手段を使って決戦を挑んでくる場合、指揮官は戦いを避けることはできない。>
(「ディスコルシ」マキァヴェッリ著 筑摩文庫)
ハンニバルと対等に戦った、ファビウス・マクシムズは、後世のヨーロッパ世界の英雄であり続けました。マキァヴェッリが生きていた時代においてもそうでした。
ファビウスの戦い方は、自分たちが勝てる状況を作るまでは交戦を避けて逃げ回り、ハンニバルの行く手を焦土にして付かず離れずの距離を維持して、決戦のチャンスをうかがうというものでした。
英雄ファビウスのやったことだから、この方法は間違いないと考えられていて、政府や王はこぞってマネをしたのです。マキァヴェッリによれば、これから戦争に行く将軍を政府や王たちはこう言って送り出したと言います。
「白兵戦はつつしめ」
「敵が攻めてくれば交戦せよ。しかし自分から挑戦してはならない」
要は、危険なことはできるだけ避けて、戦うな、ということです。