ad:tech tokyo 2012(10月30~31日開催)で行われたルグラン社主催のセッショントラックにスマートテレビに関するセミナーがあり、エム・データ社の薄井司氏と東芝の片岡秀夫氏がスマートテレビの新サービスについて語った。

講演するエム・データ社取締役、薄井司氏(筆者撮影)

 エム・データは、テレビ番組の内容を人力でテキスト入力しデータベース化している企業である。

 出演者、店舗などの画面情報、音声情報を時間軸に並べ、視聴率、eコマースの販売量などと比較すると、テレビ情報を起点にするマーケティング戦略が明確になる(参考:エム・データに関しては拙著『明日のテレビ』でも紹介している)。

 また、東芝は録画したテレビ番組に視聴者がタグ付けして共有することで、他人が興味のある番組への視聴促進が図れるというサービスを実施している。

 そのサービスにエム・データのデータを利用することで、より精緻なタグ付けが可能になり、自分の見たい「瞬間」だけをピックアップすることが可能になる。

番組内容のデータベース化と共有機能で生まれる新たなサービス

 こうした「番組データ×シェア(共有)」で見たいシーンだけを見るというコンセプトは、米国のオンラインサイトでも提供されている。

 米国版huluは、好きなセリフをテキスト入力すると、その言葉が使われたシーンが表示される機能を提供している。ドラマのセリフをテキストでデータベース化し、映像ファイルの時間軸と組み合わせれば、こうしたサービスが提供できる。

 米国のほぼ80%(ケーブルテレビ加入5800万世帯、衛星放送加入3300万世帯)の家庭は、ケーブルテレビや衛星放送が加入者に配る機械(DVR)にしか録画できない。

 米国の家電量販店には、録画HDD付きBlu-rayプレイヤーはほぼ売られていない。つまり、米国では録画した番組視聴の利便性を上げるのは、メーカーではなく配信プラットフォームの仕事なのだ。

 しかし、ケーブルテレビや衛星放送は競合が少ないので、なかなかユーザー目線のサービス向上をするインセンティブが無い。

 東芝やエム・データは、この「番組データ×シェア」を録画前提で提供する点が日本的でユニークだ。

 というのも、日本ほど「テレビ番組が無料で豊富+録画OK」な国は少ない。だから、オンデマンド視聴=録画視聴を意味する日本では、録画機を自社ブランドで販売するメーカーの仕事になる。

 東芝とエム・データの仕事は、この録画文化の国で発展したオンデマンド視聴の世界的にも先進的な事例だ。