石原慎太郎東京都知事が辞任をして新党を結成し、国政に進出するというニュースが報じられたのは10月25日木曜日だった。

 それ以前の10日間は、10月16日火曜日発売の「週刊朝日」(2012年10月26日号)に掲載されたノンフィクション作家・佐野眞一氏による連載記事に橋下徹大阪市長が憤激するという話題で持ち切りだった。

 インターネット上のツイッターでは、問題の週刊朝日が売り切れで、どこにも売っていないということだったが、わが家の近所にある書店では20日の土曜日まで棚に並んでいた。

 私は、たまたま発売当日の昼間にその書店で週刊朝日の表紙を見かけて、ちょっと異様の感に打たれた。今、インターネット上に掲載されている画像でその号の表紙を確認してみると、ワイシャツにノーネクタイ姿の橋下市長の胸の辺りに赤帯に白抜きの大文字で「ハシシタ」とあり、続いて黒字で「救世主か 衆愚の王か」とある。

 さらに、「橋下徹のDNAをさかのぼり 本性をあぶり出す」とまであって、私は雑誌に手を伸ばそうかどうか迷った末にやめた。

 翌17日水曜日には、橋下市長が定例記者会見の場で語気荒く週刊朝日と朝日新聞および佐野眞一氏への批判を捲くし立てた。それ以降の展開については、みなさんご存じの通りである。

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 私は、懐に余裕がある時は、週刊誌を立ち読みで済ませずに、なるべく買うようにしている。執筆や家事に追われて、ろくに頁をめくらずに廃品回収に出してしまうこともあるのだが、文筆を稼業とする者としては、雑誌にせよ、単行本にせよ、やはり身銭を切って購入した上で読むのが最低限の心構えではないかと思っている。

 当該の週刊朝日を買おうかどうか、私は数日迷ったが、やはり買わないことにした。近所の書店で一度手に取り、橋下氏に関する記事の頁も眺めたが、レイアウトもこれ見よがしだし、人形めいたイラストにも好感が持てなかった。よって、佐野氏による本文も読んでいない。

 実は、私は佐野眞一氏の著作をまったく読んだことがない。ことさら敬遠しているつもりもないのだが、巷間評価の高い『東電OL殺人事件』をはじめ、縁がないまま今日まで来てしまった。