話題を呼んだアップルの「アイパッド(iPad)」が5月28日、発売された。先行して発売されている米国では、販売台数が2カ月で200万台という「アイフォーン(iPhone)」を上回る勢いだ。
私も電子出版を行うために1台買ったが、その使用感は普通のコンピューターとはまったく違う。
大きさはネットブック(小型ノートPC)とほぼ同じだが、キーボードがないため重量はほぼ半分で、ソファでも電車の中でも読める。
用途として電子書籍が注目されているが、iPadはアマゾンの「キンドル」のような書籍専用端末ではない。
iPadを手にしてまずやろうと思うのは読書ではなく、動画を見たりゲームをしたりすることだろう。キーボードは使いにくく、USBもLANケーブルもつながらず、印刷もできない。iPadは基本的に事務機ではなく、家電なのである。
時代がジョブズに追いついた
iPadは内部をブラックボックスにして、普通の家電製品のように誰でも使えるようにした。これは考えてみれば、当たり前だ。あなたが冷蔵庫や洗濯機を使う時、その内部構造を知る必要はないし、知っても役に立たない。消費者が何も考えないで、スイッチを入れれば使えるのが当たり前である。
しかし、コンピューターは非常に複雑なシステムなので、かつては機械に理解できる言語で人間がプログラミングしないと動かなかった。
こうした機械中心のシステムをユーザー中心に変え、誰でも使えるコンピューターを実現しようとしたのが、1984年にアップルが発表した「マッキントッシュ」(以下、マック)だった。
マックはウインドウシステムやマウスによる直感的な操作が可能で、その頃主流だった「IBM PC」よりはるかに使いやすかったが、当時のハードウエアの性能が追いつかず、まともに動作しなかった。