水陸両用の航空機は日本の他にもカナダとロシアが製造しているが、対応できる波高は1メートル強。航続距離は、カナダ機が約2400キロ、ロシア機は3300キロとその実力の差は大きい。

アジア太平洋地域の安全航行確保は喫緊の課題

 このオンリーワンかつナンバーワンの日本の飛行艇を、国内だけでなく世界の多くの人々の役に立てることは日本の外交力にもなるのだ。引き合い照会は多く、現時点で44カ国にのぼっているという。

 北澤俊美・元防衛大臣が積極姿勢を示したこともあり、気運は高まり、同社は防衛省の承認を得て輸出に向けた動きがスタートすることになった。

 まずはインドへの輸出に向けたプロジェクトを開始。武器は一切搭載していないが、自衛隊の装備は「武器」と見なされるため輸出はできず、民間転用という形をとる。

 社内に「飛行艇民転推進室」を設置、川崎重工業や島津製作所からの出向要員とともに「オールジャパン」体制で臨むことになった。また、インドのデリー事務所も設立するなど、着々と準備を進めている。

 しかし、プロセスはかなり煩雑だ。防衛省や経産省をはじめとする関係省庁への諸手続きにも相当な労力を要する。

 まず第一に防衛省・自衛隊には、運用・教育・整備・補給・技術データ等の開示を求める必要がある。それに、飛行試験はどこで誰がするのか、運用教育はどうするのか・・・などなど様々な法律や規制などとも向き合いながら進めねばならない。1つの書類を待つこと5カ月、などというケースもあるという。

 今、アジア太平洋地域の海洋における安全航行の確保は喫緊の課題となっている。同海域の秩序維持のためには、ASEAN諸国を中心に、インド、豪州などとの多国間での取り組みが不可欠だ。