「バカの五段活用」<感覚・意識・意味・判断力・常識>がキーワードの変格活用第四段は「判断力」ということで、判断力が鈍磨しているように見えて、実はより高次の判断力が働く例がないか、考えてみたいと思います。

 第二段「意識」の話で「若い人を育てる」というベテラン側の立場から人事の例を書きました。これを逆に考えてみましょう。つまり、例えば就職活動をしている若い人の立場に立って「判断力」を考えてみたいのです。

 最初にハッキリ書いてしまえば、変に小賢しくなって、大損をしている人も、実はいるのではないだろうか、と思うのです。

すぐ「転身」したがる東大OB

 浮世の縁で偶然呼ばれ、籍を置くことになった東京大学にもかれこれ13年。最初に教えた学部学生はすでに30代、初期の院生はすでに立派な大人で、あちこちの教授職についている人も少なくありません。

 そうやって、大学を巣立っていった人たちをそこそこの数・・・3000~4000人くらいでしょうか、見てきて、思うのは、あまり物見高いのは良くないのではないか、ということです。

 例えば就職活動を考えてみましょう。

 「金融もいいけど、メーカーも手堅い、でもマスコミも魅力的だよなぁ・・・」

 なんていう「贅沢な悩み」を吐露する学生を、以前も今も目にします。これはバブル期と就職氷河期と言われるような時代で、意味は全く違うと思いますが、でも共通することは「業種」の選択は、えてして就職が決まる直前まで持ち越される、ということでしょう。

 3歩下がって考えてみれば、「メーカー」に行くのと「マスコミ」に行くのとでは、ほとんど全く別の人生がそのあとに続くことになります。

 ある知り合いは、新卒で製鉄会社に就職したものの、1年未満で退職してマスコミに転じました。そのあと20年ほどマスコミの方にずっといますが、この「転身」本人にとっては納得のいくものだったようです。

 しかし、どうなのでしょう。それから先ずっと一生の仕事にするものを、ほとんどアドリブで決めるというのは。