中国について書き始めて早7年、当初こそ題材集めに苦労したものだが、最近ネタには事欠かない。前回は在京中国大使の「内政干渉」書簡事件を取り上げたが、今週は同じ中国大使館経済部一等書記官の「スパイ疑惑」の真偽を筆者の独断と偏見で検証する。(文中敬称略)
事実関係
疑惑の外交官は李春光(45歳)、2007年から在京中国大使館経済部の一等書記官を務めた。
警視庁によれば、同書記官は外交官の身分を隠して東京都の葛飾区役所で外国人登録証明書を不正に入手し、銀行口座を開設したという。
李春光書記官には、中国進出を狙う日本企業に中国国有企業を紹介して私的に手数料を得た疑いもあり、外交関係に関するウィーン条約違反の可能性がある。それ以外にも、同書記官には政府重要機密や防衛先端技術などの「スパイ活動」疑惑が浮上している。
李春光は1967年生まれ、89年に河南大学(人民解放軍外国語学院説もある)日本語学科を卒業。89年洛陽市政府国際文化交流センター、93年に福島県須賀川市国際交流員、97年福島大学、99年松下政経塾、2003年東大東洋文化研究所などに在籍したという。
スパイ疑惑について中国側は「全く根拠がなく荒唐無稽」と全面否定だ。中国識者も「外交官の口座開設は些細なこと」と切り捨てる。冗談じゃない。日本の外交官は外国で商業活動などしない。ウィーン条約上も「接受国の法令尊重」は外交官の基本的義務である。
李春光との名刺交換
当初は匿名で報じられたが、5月30日に中国外交部が実名を公表した。早速調べてみたら、何と筆者はこの男「李春光」に2度会ったことがある。最初は2002年9月9日、場所は北京空港貴賓室、ある日本要人の出迎えで一緒になり、名刺を交換していた(上の写真)のだ。
名刺を見る限り、当時の所属は「中国社会科学院日本研究所」だが、報道にある「副所長」の肩書はない。印象については、どこかの大臣と同様、筆者も「一、二度会ったかもしれないが、よく覚えていない」としか言いようがない。特に悪い印象もなかったが・・・。
日本語についても、特に流暢という記憶はない。日本研究所にはこの種の「学者」が大勢いる。少なくとも特別優秀という印象は全く持たなかった。だからだろうか、その後も付き合いはない。逆に、付き合っていたら、今頃大変なことになっていたかもしれないが・・・。