また中国がお粗末な外交で味噌をつけた。5月14日、在京中国大使が「恫喝まがいの書簡」を100人以上の国会議員に送付、日本が世界ウイグル会議の東京開催を認めれば「日本自身の安全にも害がある」と述べ、「内政干渉」を行ったと批判された事件だ。
親ウイグル国会議員たちは激高して抗議文を送り返し、日本政府は当惑して沈黙を守り、在京中国大使館は何事もなかったかのごとく無視を決め込む。いったい誰を信用したらいいのだろう。今回はこの大使書簡について筆者なりの検証を試みる。(文中敬称略)
書簡の形式
書簡はA4で5枚、すべて日本語。1枚目は程永華大使の自署がある「カバーレター」。冒頭では、「日本国内で・・・チベットと新疆に関わる・・・後ろ向きの動きがみられ、中日関係の妨げとなって」いることを在京大使として「憂慮しています」と述べている。
続いて、チベットとウイグルに関する「中国側の立場を一層お分かり頂けるよう、ご参考までに関連資料を同封いたしました」と書かれ、2枚目以降にチベットとウイグルに関する中国政府の立場を説明したそれぞれ2ページの資料が添付されている。
要するにこれは、日中関係を憂慮する立場から、在京中国大使名で国会議員に資料を送付する書簡だ。100通以上送付したそうだから、恐らく毛筆の自署はコピーだろう。形式だけ見れば、どこの大使館でも行っている有識者への情報提供と大して変わらない。
中国お得意のプロパガンダ
問題は「関連情報」の中身だ。チベットについては、「中国の核心的利益にかかわるもの」であり、「民族の分裂に断固反対」し、ダライ(ラマ)等の「国際的活動に断固反対」し、いかなる国の政府関係者も「ダライと接触することに反対する」としている。
そのうえで「国会議員の皆さんが・・・中国の分裂を図る反中国の本質をはっきり見抜き、『チベット独立』勢力を支持せず、舞台を提供せず、いかなる形でも接触しないことを希望する」と結んでいる。
ウイグルについてはどうか。件の資料はその末尾で、日本政府が世界ウイグル会議の東京開催を「認めれば、それは中国の内政に対する干渉であり、中国の安定と安全利益を損なうだけでなく、日本自身の安全にも害がある」と述べている。
続けて、「議員の皆さんが・・・中国の分裂を図る反中国および暴力テロの本質をはっきり見抜き、いかなる形でも接触せず、『世界ウイグル会議』に対し、如何なる支持もしないことを希望する」とある。「希望表明」という形式は上記のチベットの場合と同様だ。