残りの人生があとどのくらいか分かってしまったら、何をしたいだろうか。映画『最高の人生の見つけ方』(2007年)は、そんなテーマで老年の男性2人の生き方を描いたファンタジーだ。

 富豪役のジャック・ニコルソンと元自動車工のモーガン・フリーマンが病院でたまたま出会い、ともに余命いくばくもないと自覚する。そこで人生のやり残したことのリストをつくって仲良くなった2人は一緒に実現していくというストーリーである。

 原題は「Bucket List」。最後に何をするかのリストを意味する。この映画の主人公のように、お金があればいくつものやり残したことを実現できるだろうが、普通はそうはいかない。もちろん金で買えない望みはある。

 定年後をどう過ごすか。第二の人生をどう迎えるか。50歳前後の人なら一度はそんなことを思うのではないだろうか。

 実際定年を間近にして、「さてどうするか」とか考えあぐねている人もいるだろうし、「死ぬまで働き続けたい」あるいは「死ぬまで働き続けなければならないから考えられない」という人もいるだろう。

 超高齢社会を迎えた一方で、わが国の政治の不備によって年金制度に対する不安が高まるなかで、長い老後の設計が手堅くならざるを得ない傾向はある。しかし、「老後の心配ばかりしている老後」では本末転倒ではないだろうか。

 ベッドに入る準備をして、昼間からパジャマを着込むような人生は、いかがなものだろう。どうせいつかは体が自由に動かなくなったり、思考も鈍り記憶も不確かになっていく。

 であれば、その前にやはり夢の大小にかかわらず、リタイア後の計画を練ってみたらどうだろう。

5~6年かけて日本と海外を行き来しながら

クルーズ前に鯉のぼりを揚げた関山さんのヨット・てまり(エーゲ海・ドデカニス諸島で)

 1年前からヨットで世界をめぐる旅をはじめた関山光二さんと真理子さん夫妻の例は、これからリタイア後の生活を設計しようという人には一つの参考になるのではないだろうか。

 温めてきた計画が実現されることの充実感はもとより、その計画へ向かっての考え方や実践の仕方には教えられるものが多いはずだ。

 関山さんは戦後間もない昭和23(1948)年横浜生まれ。真理子さんは1つ下だからともに団塊の世代のど真ん中の世代になる。

 2人とも長年会社員生活を送り、60歳になったのを機にリタイアして、昨春かねてから計画していた世界一周へと文字通り船出した。