本連載の第2回目「海外から品質認定を受ける時代がやってくる」において、品質立国復活のための<心構え>として提言したとおり、筆者自身も「他者の多様性を認めて、周囲の成功・失敗事例を真摯に学ぶ」ことを常々心がけている。
その意味においてシンガポールで行われる「アジア リーンシックスシグマ(LSS)&プロセスエクセレンス サミット」は、参加するたびに得るものが多く、また参加者と交流するのはとても楽しい。
この国際カンファレンスは、民間のセミナー運営会社が主催して2011年から新たに始めたもので、今年で2回目となる。
アジア地域の民間企業や公的機関などから20人以上の講演者が2日間にわたり、自分たちの組織で行われている業務改善活動の発表を行う大会だ。
実は、今回は筆者も講演者として招待され、日本の大手小売業における改善活動支援事例を発表した。
講演者の顔ぶれを見ると、製造業よりもサービス業や病院などからの発表が多いことに気づくだろう。
その理由は、アジアに広く展開しているメーカー系企業の改善活動事例よりサービス系企業の導入事例に対する関心が高いためだが、それにしても内容の多彩さには驚くばかりだ。
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さらに聴衆には、証券取引所の管理者やシンガポール政府機関の役人なども含まれており、まさに官民挙げての積極的な取り組みぶりが見て取れた。
ここに集まる参加者たちが使う共通言語は、「カイゼン(KAIZEN)」「5S」「リーン」「シックスシグマ」「プロセスエクセレンス」などである。
彼らにとっては今でも日本企業が改善の“先生”であるという敬意があるようで、日本に対してある種の期待感のようなものをひしひしと感じる。
ただ残念ながら、その日本人の参加者は筆者とJBpressの川嶋諭編集長の2人だけだったので、何とも寂しい気がした。
さて今年のアジアLSSサミットの講演から、注目すべき内容をいくつかご紹介していきたい。
最初に、グローバルの物流企業を代表するDHLの取り組みだ。すでにご承知の通り、DHLはドイツに本社を持ち、ドイツポストと両軸で世界220カ国以上をカバーする社員数約29万人の世界最大の国際輸送物流企業である。
2007年から全世界でリーンシックスシグマをベースとした取り組み“First Choice”活動を行っており、昨年までに累計7200プロジェクトを実施し、現在1300人のブラックベルト(=BB、改善活動専任のリーダー)がいる。