ネットを散策していると、お互い相容れない意見の持ち主たちが論争する「バトル」がよく行われています。言論は自由ですし、相手を論破しようとするのはいいとしても、熱くなった人たちに見えていないことがあります。議論に参加はしないが、じっと成り行きを見つめている「ROM専」(「Read Only Member専門」の略:電子部品の「Read Only Memory」に引っかけた言い方)と呼ばれる観客の目です。

 小説を書いていて登場人物になりきるような意味での熱さは、よい熱さでしょう。しかし、ネット上のバトルで、自分の感情をコントロールできない熱さを見せられると、周囲は幻滅することが多いものです。

 「自分はネットでバトルなんかしない」という方もおられるでしょう。では、仕事ではどうでしょうか? FXなどの投資ではどうでしょうか?

「ローマと和平を講ずるべきだ」と唱えた賢人

 人間というものは、自分の希望をどの線に止めておいたらよいか判らぬまに、失敗してしまうものである。そして、自分の実力を冷静におしはかってみようとはせず、底なしの望みに期待をかけて、結局は破滅してしまうものである。
(『ディスコルシ 「ローマ史」論』ニッコロ・マキァヴェッリ著、永井三明訳、ちくま学芸文庫)

 

 古代ローマとカルタゴが戦った「第2次ポエニ戦争」は、当初名将ハンニバルの指揮したカルタゴ優勢で進みました。

 今なお世界史的に重要な「カンナエの戦い」でカルタゴが勝利すると、ローマを裏切りカルタゴにつく都市が出てきました。ハンニバルは、カルタゴに寝返ったイタリア南部のカプアに入ると、底をつきかけていた物資を補給するためにカルタゴ本国に支援を要請します。

 もともと第2次ポエニ戦争はハンニバルが勝手に始めた戦争で、カルタゴ本国の命令で始めた戦争ではありません。そのため、ハンニバルからの使者が来るまで、カルタゴ本国は何の支援もしてこなかったのです。