今年のCESで一番驚いたのは、パソコンメーカーのレノボがスマートテレビを発表したことだ。

 40インチでリモコンが2つ(テレビ用とゲーム用)、音声検索機能が付いている。地上波のテレビ以外に、映画、ゲーム、音楽をオンデマンドで楽しめる。

 レノボテレビは、OSが「Android 4.0」でチップはクアルコムの「SnapDragon」を利用する。つまり、中身はスマートフォンと何ら変わらない。テレビチューナー付き大型画面のスマートフォンだ。

 「スマートテレビとテレビが見られるパソコンはどこが違うのか?」「いや同じです」という議論を飛び越え、テレビがスマホ化してしまった。詳しくは『明日のメディア:デジタル』で解説しているので参考にしてほしい。

「テレビ」の外側に拡大する「スマートテレビ」

 マイクロソフト、インテルからグーグルに至るまで、今までのIT企業によるテレビ受信機市場への参入戦略は、テレビの外付けBOXを開発するか、家電メーカーにチップやOSを利用した完成品を販売して貰うものだった。

 ところが、レノボは自社ブランドでテレビを製造、マーケティング、販売する。IT企業が「テレビ付きパソコン」ではなく「テレビ」として売り出すのだ。

 それは、「Google TV」の考え方自体を1年で古くさせてしまう。2010年11月に売り出された Google TV は、ソニーなどの家電メーカーが製造、販売するものだった。

中国Hisense(海信)のスマートテレビ(著者撮影、以下同)

 ところが、これからは、グーグルもアップルも、レノボのように自社製品に「テレビ」を名乗らせてもよい。いや、むしろ「テレビ市場」の外側に「スマートテレビ市場」が形成されるのだろう。

 スマートフォン市場は、大手9社のシェアがここ2年で20%以上減少した。一方、テレビ市場は大手5社が60%のシェアを占め、ここ5年大きな変動はない。

 しかし、「スマートテレビ」市場のシェアは、スマートフォンと同じく大手メーカーよりも無名の新興メーカーが大きくなるだろう。

 なぜなら、ハイアール、TLC、ハイセンスなどの中国企業は、既に「スマートテレビ」を名乗った商品を続々と開発、発表しているからだ。彼らは「テレビ」市場には参入できなくても、「スマートテレビ」なら売り出せるのだ。

ブロードバンド、コンテンツ配信プラットフォームの成長

 2008年にインテルとヤフーが提唱した「TV Widget」から始まったテレビのスマート化は、テレビ市場参入を目指したがうまくいかず、結局「スマートテレビ」市場を独自に形成することとなった。