【お断り】JBpressのメールマガジン「Business Agenda」が2010年1~3月に連載した「私のメディア活用法」から抜粋し、編集したものです。

西山隆一郎・西武ホールディングス広報部長
私のメディア活用法(4)

 第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)、みずほ銀行で22年余の銀行マン生活を過ごし、通算すると10年半が広報担当だった。2009年10月以降、現職で再び広報に携わっている。

 広報というのは「メディアと対峙」という大上段に構えた業務ではなく、あくまで「対話」だと思う。メディアとのコミュニケーションを良くしながら、企業を社会に分かってもらうことに尽きる。肩の力を抜いて、「記者に理解してもらうにはどうすればよいか?」と常に考えるよう努めている。

 日本のメディアの良いところは担当記者制など、企業との間の壁が低いこと。それは同時に欠点にもなり、「なあなあ」に陥らないようお互い律しなければならない。担当記者のローテーションは早いが、モノゴトをよく分かっている記者とは担当を離れても長く付き合いたい。

 メディアへの情報提供は、持論なのだが、基本的に(各メディアに同時発表する)リリースや記者会見になる。止むを得ず戦略的にリークする場合でも、「先行者優先」の原則を適用する。最初に知った記者が、最初に報道すべきだということ。記者の努力に報いないといけない。実力のある記者はどんどん育ってほしいという思いもある。

通信社とテレビを活用できれば、一人前の広報マン!

 企業側からどうしてもリークする必要がある場合、まずは通信社あるいはテレビを考える。これを個人的に「自動リリース機能」と呼んでいる。通信社に情報提供すると各メディアにも同時に伝わり、ある程度は公平性を確保できる。グローバル企業なら、外資系の通信社を選択肢に入れることは言うまでもない。

 通信社とテレビを日常うまく活用できれば、「広報マンとしては一人前だ」とよく後輩に言う。「○○新聞で今回はやりましょう」という提案は最終手段であり、事情により仕方ない時に限られるべきだと思う。

 広報マンがどんなに情熱を持っていても、企業トップに理解がなければ、広報は無力化してしまう。これは広報マンの限界でもある。記者に理解を求めると同時に、常にトップの理解を求めなくてはならない。

 広報マンは社内外に対してストイックでなければならない。「俺がやったんだ!」という人には向かず、仕事をやり遂げた後で親しい人とだけ、あるいは1人で美味い酒を飲む。これをできる人が望ましい。