人間には個性があり、長所があれば短所もある。得意なこともあれば、不得意なこともある。人には誰しも弱いところがあって、英語では「ウイークポイント」っていうらしい。おれは中学中退だから、ウイークポイントは「学がない」ことだ。

 昔、おふくろからは、「お前は学校行っていないんだから、せめて、嫁さんくらいは学校出ている娘さんをもらいなよ。夫婦が2人とも学校出てなければ困るから」って、言われた時期もあったけど。

腕のいい料理人の店が流行るとは限らない

 学問のある人や、優れた技術を持っている人はたくさんいる。けれども、それを生かして仕事をしている人は全体の何割いるだろうか。

 例えば、腕に覚えのある料理人がいたとしよう。調理の技術に関しては名人級だったとしても、その店が流行るとは限らないんだな。

 店っていうのは、客が二度三度と通ってくれるかどうかによって、流行るか閑古鳥が鳴くかが左右される。一度入った客が次も来てくれるとは限らないからね。

 腕があるのに、もしも店が流行っていなければ、その原因は、客が「また、あの店に行きたい」という気持ちにならないということじゃないかな。それは、味はいいのにサービスや雰囲気、値段に問題があるとか、料理以外の要因かもしれない。もしくは、単純に客がその店を忘れているのかもしれない。

 だったら、お客に満足してもらえるように店を改善したり、店の存在を忘れられないためにどうすべきかを考えて実行する必要がある。

知識じゃなくて知恵で勝負するんだ

 誰にも作れない商品を持っていて、「取引したい」という客が全国から押し寄せて来るくらいの状況にあればいいが、人間の能力は所詮、五十歩百歩だ。そして、当たり前のことだけど、みんな死にものぐるいで仕事をしている。では、競争相手がたくさんいる中で、やりたい仕事をするには、どうすればいいか?

 そのためには、「頭のいい人」になるより「利口な人」になるのが手っ取り早いんだ。

 世の中には、頭のいい人と利口な人の2種類がいる。頭のいい人は知識を使う。記憶力がいいから勉強はできる。大企業には、頭がよくて、一流大学を出た知識のある人がたくさんいる。その中で「学問ができます」と言ったって、取り柄にはならない。

 一方、利口な人は何を使うかというと、知恵を使うんだ。利口な人というのは、どんな時にもアイデアが出てくるもので、これは学歴とはまったく関係がない。知恵は知識よりも上なんだな。