企業経営というのは潮の流れに乗りながら船を一定方向に操舵していく作業に似ている。行く先が潮の流れと全く同じであれば容易だが、通常は巧みな経営手腕が求められる。

 問題が起きた時の回避の仕方や対処術を誤れば、企業の存続に関わることもある。成功している世界企業から秘訣を探ることは重要だが、同時に失敗から学ぶことも必要だ。

 ここで取り上げる企業はフランスの総合小売業カルフールである。業界では世界最大のウォルマートに次ぐ第2位(売上高)で、世界で最初にスーパーマーケットと百貨店を結合させたハイパーマーケットという業態を導入した企業でもある。

世界規模の業績悪化に直面

昆明のカルフールで男が立てこもり、警官隊が射殺

中国遼寧省瀋陽にある仏小売大手カルフールの店舗に向かう買い物客〔AFPBB News

 社史を眺めると、成功と失敗(撤退)の繰り返しで、ある意味で一般企業の足跡と変わらない。

 欧州では本国フランスやスペイン、ポーランド、イタリアなどで成功を収め、他地域ではブラジル、アルゼンチン、中国、インドネシアなどで特に良好な業績を残している。

 しかし、英国やドイツ、米国、日本などでは失敗したと言って差し支えない。さらに過去5年ほど業績は低迷し、株価も下落基調にある。潮の流れに乗り切れず、進みたい方向が定まっていない印象だ。

 2007年にはLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンのアーノルト最高経営責任者(CEO)が55億ドル(約4235億円)相当のカルフール株を取得して救済に動いた。だが現在、株価は半分以下にまで落ちている。

 今年10月、カルフールは今年5度目となる「プロフィットウォーニング(業績の下方修正)」を発表し、フランス国内だけでなく、世界規模の業績悪化に直面した。原因は世界中を飲み込んでいる景気低迷だけではない。何がいけなかったのか。

 まず日本の撤退劇を眺めたい。カルフールが「日本上陸」を果たしたのは2000年にまで遡る。幕張(千葉)を足がかりに、南町田(東京)、光明池(大阪)、狭山(埼玉)など都市郊外に大規模店を8店舗開けた。

 だが、他社が追随するように大型店を続々と開けたことや、本社のあるフランスでの経営不振による原資不足、最終的には購買文化の違いなどもあり、2006年に全8店舗がイオンに譲渡される。