米国民の新聞離れは日本よりもずっと深刻だ。ワシントン州の「シアトル・ポスト=インテリジェンサー」がオンラインのみに転向し、コロラド州デンバーの「ロッキーマウンテン・ニュース」が廃刊になり、カリフォルニア州の「サンフランシスコ・クロニクル」紙が大幅縮小するなど、2009年は地方紙の経営難のニュースが続いた。
日本の新聞社は、平均して収入の約7割を購読料、3割を広告から得ている。米国の場合は3割を購読料、7割を広告収入に頼ってきた。インターネットが普及するにつれ、より効率のいい媒体に広告が移動していったのは必然と言えよう。だが、新聞はこれからどうなるのか。記者の解雇が相次いで質の高い調査報道が先細る中、ジャーナリズム自体の衰退が懸念されている。
とはいえ、人々は世の中のことを気にしなくなったわけではないし、全くニュースを読まなくなったわけでもない。ネットには、ベンチャー企業による新手のニュースサイトが続々と登場している。「すべてのブロック(町内の通り)で起きていることをカバーするマイクロローカルニュースサイト」と銘打つ「エブリブロック」もそのひとつだ。
デジタル時代のニュースのあり方を追求
タイトル:Adrian Holovaty
撮影:Matt Biddulph from UK
この作品は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。
創設者のエイドリアン・ホロバティさんはジャーナリズムの学位を取得後、ワシントン・ポストのウェブ版をはじめ、カンサスやアトランタのローカル新聞のニュースサイトで経験を積みながら、「デジタル時代、住民にとってのニュースとは何か」を考え続けた。そして構想したのが、“コンピュータープログラミングによるジャーナリズム” だという。
2005年3月にグーグルマップのサービスが始まると、ホロバティさんはわずか3カ月後には地図情報とシカゴ警察署の犯罪データを組み合わせたサイト「シカゴクライム」を開設した。これがエブリブロックの前身となる。
米国の大都市は、ブロックごとに街の表情がガラリと変わる。お洒落なレストランやブティックが立ち並ぶ通りからほんの数ブロック先へ行っただけで、麻薬の売人が客引きをしている場面に出くわして回れ右する、などということもある。車上荒らしや強盗といった犯罪は、特定のエリアで一定期間続くことが多い。
事件の最新情報を入手して地図上で確認できるサイトは、自分自身や家族の行動範囲の安全状況を把握するのに役立つ。住民たちは「シカゴクライム」に掲載された犯罪情報をプリントアウトして、市や警察に街灯の設置やパトロール強化を要請したという。