今回は、人口減少の始まった地方都市で起こっている現実をお話しします。
前回は、自宅で死ぬことができるようにするためには、障害を持っている人でも自分の力で病院に行けるように、ノンステップバスの整備や、バス停、鉄道の駅のバリアフリー化などが重要だというお話をしました。
しかし、すでに人口減少が進んでいる地方都市では、バスや鉄道などの公共交通機関の路線の維持がとても難しくなっています。
田舎に行くと、都市計画がきちんと定められていないところが多く、田んぼの中に小規模な宅地開発などが行われた結果、お年寄りの家が低密度に分散しているという状況があります。
この状況がなぜ困るのかというと、まず、家が低密度に立っているので、公共交通機関自体が採算を取れず、路線がありません。また、もともと自家用車に頼っている人が多いのですが、年を取ると車に乗れなくなる人が増えてくるので、そうなると移動の手段に困るのです。
既存のバス路線があるところでも、バスは勤め人や学生さんの利用による料金収入に多くを頼っていますが、今後も学生さんは減りますし、高齢化が進むと通勤に利用する人も減っていきます。そのため、路線の維持すら危ぶまれます。
赤字の路線については、行政が財政支援をして支えていますが、この継続がとても厳しくなっています。
都市部に住む読者の皆さんが出張などで田舎の町に行くことがありましたら、バスにお客さんが何人乗っているか数えてみてください。空気を運んでいるのではと思うくらい乗客は少ないはずです。数少ない乗客も、高齢者無料パスなどを使えるお年寄りが多いのです。
郊外で家が「低密度」に建っていると何が問題なのか
低密度に分散して家が建っていることの弊害は他にもあります。
特に中山間地帯では、隣の家まで車で5分以上かかるというように、さらに低密度に家が建っています。ご飯を作ることが大変なお年寄りに弁当を配る「配食サービス」という福祉事業がありますが、このような中山間部では配る手間がかかるので採算割れとなり、公的支援なしには成り立たなくなっています。
これは介護ヘルパーさんも同じです。家が分散していると、移動にかかる時間と費用が馬鹿になりません。福祉サービスの実施の面でも問題が生じるのです。
だから、人口が減少し、高齢者数が増える地方都市では、「町を意図的に縮める」という政策がこれから必要になってきます。