前回、トップを脅かす実力者をどう叩くかについて書くと申し上げていましたが、ちょうどいい事例が最近発生しました。大阪市長選と大阪府知事選における、大阪維新の会の大勝利です。
この勝利が既存政党に与えた衝撃は、かなりのものです。大阪維新の会は国政への進出もほのめかしており、大阪府選出の国会議員などには、かなりの恐怖感を与えていると見られます。既存政党にとって、大阪維新の会は下手に敵に回すと自分たちが有権者からそっぽを向かれる。かといって放置しておいたら、自分たちの勢力をそぎ落としにかかってくる厄介な存在です。
よって今回は、「反橋下」「反大阪維新の会」の立場の政党が、どのように対処すべきかを考えてみましょう。
人間は新しいものに飛びつきたがる
<国家の内部あるいは外部から難事が起こった場合、真正面からあたるよりは時を稼ぐ方がはるかに安全である。>(『ディスコルシ 「ローマ史」論』、ニッコロ・マキァヴェッリ著、永井三明訳、ちくま学芸文庫)
キレの良いコメントをするテレビタレントとしても知られていた弁護士、橋下徹現大阪市長が大阪府知事選に担ぎ出されたのは、太田房江知事が金銭問題で評判を落としたのがきっかけです。
自民党大阪府連は、現職の強みを生かして再選を目指そうとする太田知事を降ろすには、知名度のある候補者の擁立がよいと判断したのでしょう。そして白羽の矢が立ったのが橋下徹氏でした。
今にして思えば、どうして橋下徹という男の本当の姿を見抜けなかったのか。見抜けていたらこんなことにはなっていなかったと自民党大阪府連は後悔しているでしょう。
しかし、それは今だから言えること。当時の判断としては決してまずいものではなかったはずです。なぜなら、自民党の支援を必要としないほどの知名度があったとはいえ、結果的に自民党の力によって当選した知事が、敵に回ることになるとは思わないからです。
実際、マキァヴェッリもこうした危機を事前に見抜くのは困難だと認めます。人間は新しいものに飛びつきたがる性質を持っているからです。