戴清民少将(Major General Dai Qingmin)、現在人民解放軍総参謀部の第四部長を務める、中国ではかなり有名な軍人だ。この名を聞いてピンとくる人は相当の軍事オタクだろう。「米中サイバー戦争」など、同少将抜きには決して語れないからだ。

文武両道の才人

北京の中心街で建国60年軍事パレードの予行演習

人民解放軍の戦車(建国60周年パレードの予行演習で)〔AFPBB News

 戴少将は解放軍でいち早く「ネットワーク戦と電子戦の複合」に着目した「情報化戦の父」として、米専門家には広く知られている。恥ずかしながら筆者が初めて Major General Dai Qingmin の重要さを知ったのも、米軍のサイバー戦関係文献からだった。

 3月22日に香港へ移転したグーグル中国語検索サイトで「戴清民」を調べると、約1万1300件のヒットがある。英文グーグル検索でも「Major General Dai Qingmin」は約1万5500件あった。これに対し、日本語サイトの検索ではわずか29件しかない。いかにも寂しい限りである。

 ちなみに、グーグル日本語サイトで「戴清民少将」を検索すると、不思議なことに「文武に優れた才人で、これまで多くの漢詩を発表しており、出版記念会に数百人が集まった」ニュースしか見つからず、軍事面での業績に関する情報はなかった。

 ネット上の公開情報を見る限り、中国のサイバー戦に関する民間レベルの研究は、日本よりも米国の方が進んでいるようである。

情報化戦の父

 戴清民少将は1943年山西省生まれの67歳、解放軍の総参謀部通信部副部長、同軍電子工程学院長などを経て、2000年に総参謀本部第4部(電子部)長に抜擢されている。写真ではごく普通の柔和なおじさんに見えるが、一体彼のどこが凄いのだろうか。

 1990年代の湾岸戦争、コソボ紛争あたりから米軍の戦い方は大きく変わり始めた。精密誘導兵器を多用した、いわゆる「ビデオゲーム型」戦争の始まりである。特に、中国は1999年、ベオグラードの中国大使館「誤爆」事件でこのことを思い知ったようだ。

 2003年、当時の江沢民・中央軍事委員会主席は、現代の戦争が「機械化戦」から「情報化戦」に変わりつつあるとして、中国の軍事改革の必要性を訴えている。こうした基本軍事戦略の転換を影で主導したのが、戴清民少将だったというわけだ。