このご時世にもかかわらず、毎年、前年比30%の成長を続けている企業がある。その名は、「Michel & Augustin(ミッシェル・エ・オーギュスタン)」。ミッシェルとオーギュスタンという2人のパリジャンが5年ほど前に起業したもので、オリジナルのビスケットやヨーグルトといった商品を個性的なパッケージングで展開している。
ビジネススクール出の秀才が菓子店を創業
今でこそ、パリ近郊に社屋と呼べるものを構え、総勢28人の企業だが、最初は、中学時代の同級生であるミッシェルとオーギュスタンが、自宅のアパートのキッチンで商品を作り、サロンを事務所代わりにしてスタートしたものだった。
2人とも1975年生まれ。つまり起業した時は20代終わりという若さだが、実はその前にもそれぞれに職歴がある。
オーギュスタンは、パリのビジネススクールを卒業してから、地中海クラブ、エールフランスなどのいわゆる有名企業で働き、さらに、新技術のコンピューターソフトを扱う会社を起こしたりもした。
そうかと思えば、パリ市が主催する製菓教室に1年間通い、職業適性証も獲得。つまりパン職人のタイトルも身につけたというわけだ。
片やミッシェルの方はと言えば、やはりパリのビジネススクールを修了後、銀行に就職。しかも財政戦略に携わるポストで働いたというほどの切れ者で、相棒のオーギュスタンいわく、「若くしてひと財産なした」人であるらしい。
有名店が立ち並ぶパリに新規出店、その勝算とは
そんな、人も羨むようなキャリアを持つ若者が、自前のビスケットを作って売るという、なんともプリミティブなビジネスに乗り出した。
その変わり身の鮮やかさは、話としては大いに愉快だけれども、果たしてそれなりの勝算があってのことなのか・・・。
パリの街には1つのブロックに数軒という単位で、パン屋もパティスリーもたくさんある。
それにスーパーのお菓子や乳製品の棚には、既に数え切れないほどのマークの商品が並び、ネスレやダノンなど、その世界では巨人とも言える大企業がしのぎを削る、既に飽和状態とも言える分野である。
そのあたりのことをオーギュスタンに尋ねると、彼はこう答えた。
「僕らはすごく食いしん坊。美味しいものが大好きというのがまず最初にあります。そのうえで、本当に美味しくて、正直な、まやかしのないものを作りたいと思ったのです」