1月21日の衆院予算委員会で菅直人副総理・財務・経済財政相が、「私のところには本予算の後、すぐ補正を組むという話は全くない。私の頭の中にも、全くそのかけらもない」と述べたことで、ある程度沈静化するのではないかと筆者がみていた2010年度入り後早々の補正予算編成論(参院選前の追加経済対策論)が、連立与党である国民新党が主導する形で急浮上し、債券市場でも関心事になっている。3月24日夕刻の参院本会議で2010年度予算は可決成立する見通しで、その後の政府や与党の動きが注目される。

 事の発端は、朝日新聞が3月17日朝刊で報じた、「補正7兆円規模国民新党要求へ 予算成立後」という記事である。国民新党の亀井静香代表(金融・郵政改革担当相)は同日午前、首相官邸で鳩山由紀夫首相と会談し、早期の補正予算編成を含む追加経済対策に取り組むよう進言した。会談後に亀井代表は、「首相も国民生活が数字以上に痛んでいるという強い思いを持っていた。間違いなく予算が成立した後に(対策を)やると思う」「首相も認識は一緒で、2010年度予算の成立後、さらに思い切ったてこ入れが必要との考えだ。そのうち具体的な政策になる」と語った。同日午後の記者会見で平野博文官房長官は、「デフレ状態が続いていることをしっかり受け止めた対策が必要ということは、考えられるのではないか」と述べて、亀井提案に理解を示した。

 一方、鳩山首相は同日夜、「(補正予算の)話は一切していない」「一般論としてのお話をいただいた。経済にしっかりと手を打つことは大事という亀井大臣の思いは感じたし、私もそのように思っているが、具体的に追加経済対策を打つべきだとか、そういう議論を亀井大臣がされたわけではない」という、慎重な発言にとどめた(3月17日 ブルームバーグ)。

 以上のような経緯がある中、日経新聞は翌18日の朝刊1面で「政府・与党内追加経済対策論が浮上 官房長官『脱デフレへ必要性も』」と報じた。ただし同記事は新たな経済対策の財源について、すでに2010年度予算の中で用意されている「予備費など計2兆円の別枠を活用する」とした。2010年度予算案には、経済危機対応・地域活性化予備費1兆円と、非特定議決国庫債務負担行為限度額1兆円、計2兆円が、経済対策を追加で打ち出す際に活用できる財源として計上されている。

 追加の財政出動に対して明らかに慎重なスタンスを取っているのが、中期財政フレーム・財政運営戦略を6月までに策定しなければならない、仙谷由人国家戦略相である。仙谷氏は3月19日のブルームバーグのインタビューで、追加の財政出動余地について、「そんな余地は極めて小さい」「そこまで無理をしなければならない状況が来るのか、これも慎重に見なければいけないと思う」と明言した。また、菅副総理・財務・経済財政相は3月23日の参院財政金融委員会で、財政健全化に向けた立法措置に超党派で取り組むアイデアに言及した。ただし、この動きを「理念先行」と評したメディアもある(3月24日 読売新聞)。