9日のNY市場、リスク回避が強まり、ユーロを始め、資源国通貨も急落した。前日も憶測が出ていたが、ロンドン時間に欧州の決済機関LCHクリアネットがイタリア国債の証拠金率を引き上げたことをきっかけに、イタリア国債が大きく売られ、10年債利回りは財政運営上、危険水準ともされる7%を上回っている。イタリアの動向に神経質になっていた市場は敏感に反応したようだ。
ユーロはその発表後、売りが強まったが、NY時間もその流れを引き継いだ格好。NY株式市場でダウ平均が一時400ドル超急落する中、ユーロドルも1.35台半ばまで下げ足を早め、本日の高値から300ポイント超急落している。
ベルルスコーニ首相の辞任はほぼ確定的で、週内にも緊縮計画を盛り込んだ財政安定化法案が可決される見通し。それに伴って12日にも首相は辞任を表明すると見られている。しかし、次の新政権が年金や労働者保護など社会保障費の削減にどれだけ切り込めるか未知数な部分もあり、投資家は一旦イタリア関連のエクスポージャーを切り離そうという機運が強いようだ。
イタリア財務省は明日予定している50億ユーロ相当の1年物財務省証券の入札は予定通り実施すると発表した。この他、月内の入札も予定通り実施するとしており、動向が注目される。
ここ数日、ユーロドルは1.37台で収束し、次のアクション待ちの状況も見られたが、きょうの動きで21日線の下に完全に放り出された形となっており、定石通りボリンジャーバンド(21日・2標準偏差)下限に到達。下値メドとしては心理的節目の1.3500。年内に1.30台までの下落の可能性も指摘され始めている。
相対的なドル買いからドル円はしっかりとした動きだったが、78円の水準は重くなっている雰囲気も見られている。
◆東欧も要警戒 東欧通貨は09年の危機以来の安値水準更新続く
イタリアなど欧州債務問題への懸念は根深く、ユーロ売りが収まる気配が見られない。その様な中、次の脅威として東欧を指摘する向きもある。実際、為替市場でも、ハンガリーフォリントやポーランドズロチといった東欧通貨は、ユーロに対しても下落しており、2009年の東欧危機以来の安値水準を日々更新している状況。
西欧の混迷に対して東欧が無傷でいられるはずが無いことは容易に想像できるが、欧州復興開発銀行(EBRD)の主任エコノミストは、西欧の金融機関が規制強化による高い自己資本比率維持と、資本強化のために、東欧から資金を引き揚げ、支社なども撤退する可能性があると警告しており、動向が警戒される。
(Klugシニアアナリスト 野沢卓美)