民主党内から幹事長・小沢一郎の辞任を促す発言が一斉に出た。財務副大臣・野田佳彦、元政調会長・枝野幸男、国土交通相・前原誠司という、いずれも小沢に距離を置く議員が立ち上がった。小沢の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件では、ほとんどの民主党議員が沈黙を守ってきたが、ようやく「非小沢系」が反旗を翻した。「小沢抜き」民主党誕生のきっかけとなるのか、それとも小沢によって叩き潰されるのか。民主党内で権力闘争が勃発した。(敬称略)

前原国交相も小沢氏に反旗

 口火を切ったのは野田。2010年1月29日のTBS番組収録で、小沢の進退に関し「参院選で安定政権になることが一番の大命題(=大目標)。何かの事実があったときには、その大命題に沿った判断をすることだ」と発言した。

 野田は1月31日のNHK番組でも同様の発言を繰り返した。「最終的には参院選で連立与党が勝利し、安定政権をつくることが大目標だ。そのためにどういう判断をするかを、その都度考えていくということだ」

 この事件で逮捕された小沢の元秘書、衆院議員・石川知裕の拘置期限は2月4日。石川が起訴されれば、小沢はどう判断すべきか――。小沢続投は世論の支持を得られないと見て、野田は事実上の「辞任要求」を突きつけたのである。

「小沢辞任すべき」76%、小沢に冷遇された野田が・・・

 実際、2月1日付の毎日新聞の世論調査によると、石川が起訴された場合、小沢が「辞任すべきだ」と回答した人は76%に上った。

 前財務相・藤井裕久が辞意表明した際、民主党内では財務副大臣である野田の昇格も取り沙汰されていた。しかし、小沢が「非小沢」色の強い野田を後任として許すはずない。鳩山は小沢の意向を忖度し、鳩山政権では小沢に擦り寄って控え目にしてきた副総理・菅直人を財務相兼務とした。

 野田がこの人事に不満を漏らしたかどうか、定かではない。だが、「小沢支配」体制が続く限り、野田や野田グループ議員は今後もポストで冷遇され、浮かばれないという構図が一段と鮮明になったのは事実だ。

 いや現下の情勢では、民主党が小沢とともに「沈没」しかねないとの懸念もある。党は決して小沢と一蓮托生ではない。野田は参院選勝利を大義名分に、意を決して辞任の決断を小沢に迫ったのだ。