米中関係に再び暗雲が垂れ込め始めた。今年に入り、米国が「台湾に対する武器売却」と「バラク・オバマ大統領のダライ・ラマ氏との会談」に踏み切る見通しとなったからだ。既に中国側は対米批判キャンペーンを開始し、報復措置を検討中とすら報じられている。
これから数カ月間、米中関係が相当ギクシャクすることは間違いなかろう。しかし、中国はそうした事態を見越して、既に効果的な手を打っているようだ。今回は「中国株式会社」ワシントン支店の対米広報外交の実態をご紹介する。
従来と異なる中国側の反発
過去数年間、米台間では高性能の米国製武器売却問題が最大の懸案になっていた。台湾側の希望リストの中にはF-16戦闘機、陸上配備型ミサイル防衛システム、攻撃型潜水艦などが含まれており、中国が強く反発するのも理解できないわけではない。
また、中国側の強い反対にもかかわらず、オバマ大統領がダライ・ラマ氏との会談を決断したことも北京にとっては癪の種だ。昨年米国は中国に配慮してかダライ・ラマ氏との会談を見送った経緯があるが、今回米側の決意は相当固いようである。
もちろん、従来も似たような状況はあった。米国の対台湾武器売却は初めてではない。過去10年以上、ダライ・ラマ氏訪米の際には大統領への表敬が実現していた。しかし、今回が以前と異なるのは、最近中国が対米関係で「自信」を深めていることだ。
こうした自信にはそれなりの根拠がある。リーマン・ショック後、米国の国力の低下は誰の目にも明らかとなった。これに対し、「中国株式会社」型の国家資本主義システムは世界的同時不況を見事に克服し、今や「一人勝ち」を続けている。
さらに、中国側の「自信」については、もう1つ指摘すべきことがある。それは、ワシントンにおける中国政府のロビー活動が最近飛躍的に改善・拡充され、米議会に対する影響力が拡大しつつあることだ。
貧弱だったロビー活動
筆者は1980年代初頭と90年代前半の2回、ワシントンに在勤したことがある。当時の中国大使館といえば、ワシントン北西部のコネチカット通り沿いの古いホテルのようなビルだった。以前の「中華民国大使館」をそのまま接収したものだと聞いた。
中国大使館の活動は低調だった。外交官は全員大使館内に居住し、あまり街には出ない。英語も満足にできない外交官が大勢いた。議会担当は1人だけ、しかも米議会に対するロビー活動はもっぱら全米商工会議所など米側民間組織に頼っていたようだ。
当時ワシントンの「中国」のロビー活動と言えば、台湾の「外交官」の独壇場であり、米議会内には強力な「台湾擁護派」が形成されていた。米行政府が中国との関係改善を図ろうとしても、議会が異論を唱えるケースが少なくなかった。