最悪期を脱したかに見える経済指標を背景に、米国では超低金利政策の終焉と非伝統的手段の解除が近づいてきた。ドル金利の上昇観測に加えドルの流通量の増加ペースが相対的に落ち着いてきており、2009年のような一方的なドル安懸念は後退しつつある。

 このため、市場のテーマは積極的な財政出動の結果として財政が悪化した国に移り始めた。中でも、単一通貨を採用しているユーロ圏が最大の標的になる。各国のファンダメンタルズの違いに目をつぶりながら、欧州中央銀行(ECB)は金融政策を行わざるを得ないため、国家間の信用格差がクローズアップされてしまうのだ。

 ドイツやフランスなど主要国と、非主要国との間で信用格差が拡大。主要国には非主要国への信用補完を通じてユーロの信用維持が期待されており、それが主要国の財政への足枷として危惧される。国際金融市場ではドルよりも、ユーロに対する懸念が徐々に高まってきた。

過剰流動性「ワールドダラー」の伸び率が鈍化

 ワールドダラーの増加率とドルインデックスを視覚化した。過剰流動性の指標となるワールドダラーは依然として増加傾向にあるものの、その伸び率は鈍化している。

 2008年9月のリーマン・ショックを受けて、米連邦制度準備理事会(FRB)は金融機関の信用懸念を払拭するため、自らのバランスシートを提供することで民間の肩代わりを行ってきた。

米誌タイムの「今年の人」にバーナンキ議長

「出口」模索するバーナンキ米FRB議長〔AFPBB News

 2009年夏以降、FRBはその非伝統的手段からの出口を模索するようになった。実はこの時点からドルの増加率に変化が生じ、過剰流動性を背景にドルが全通貨に対して価値が下がる事態が起こった。しかし過剰流動性の伸び鈍化とともに、ドルの需給には変化の兆しがうかがえる。

 2009年に米政府は住宅減税を行い、自動車購入者に対する補助金を出すなど民間需要不足の穴埋めを行った。また、FRBは金融緩和が個人にまで十分行き届くよう、長期債の買い取りなどを通じて住宅ローン金利の低下を促した。夏場を境に新築住宅価格の下落に歯止めが掛かり、月次ベースでは上昇へ転じた。新車販売台数も年換算で1000万台の大台を回復している。