指紋手術し生体認証すりぬけ、国外退去中国人を逮捕

ICカードや生体認証などで企業のセキュリティー管理は厳格化している〔AFPBB News〕

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 さらに日本経済の長期停滞。かつてなら企業にも「長期的に利益を追おう」という寛容さがあった。しかしここ10年余りは、利益が出ないからこそ短期の利益を求める。当然、社員一人ひとりに成果を求められる。お互いがライバル。その結果、ざっくばらんに心を開いた人間的な関係は薄れ、それがまた職場の雰囲気を変えた。

 こんな状況では、気楽にオフィスを抜け出せるわけがない。しかも、抜け出せない理由は、何とも言いがたい周りの目。同調圧力と言い換えてもいい。要するに、1人だけ目立つことはやりにくい。皆と一緒。かつてはあれだけ「目立ちたがり屋」が集まり、自由な雰囲気が横溢していた大手商社さえ、その環境は様変わりしてしまったのだろう。

失敗するぐらいなら、売り込まない営業マン

 似たような話をもう1つ。日本と中国の中小企業の商談会を取り持つなど、両国の企業交流を促進している団体の担当者から聞いたものだ。

 商談会を開くと、中国側からは省エネ・環境関連の機械を買いたいという要望が、最近は多く出される。そこで日本側の適当な中小企業に繋ぐのだが、前向きに対応するところが少ない、という。それもトップまで話が上がらずに答えが返ってきてしまう。結局は、付き合ったことがない相手と、慣れない交渉をすることの面倒さから、商談に乗ってこないらしい。売り込むチャンスは大いにあるというのに、だ。

 「かつては売れるかどうか分からないのに、売り込みたいと言ってくる日本の中小企業は多かった。しかも交渉だって、きちんとしたルールがあるわけではなかったから、それこそ面倒なことばかりだ。しかしそういう商談を自ら切り開くことによって、仕事の面白さを知り、ビジネスマンとして成長し、人間としても大きくなった。だが、今は失敗をしようとしない。一人別のことをするのではなく、周りと同じであればいい、という人間が増えた」。団体の担当者は残念そうにこう言った。