米国人が最も訪れたい都市、サンフランシスコには寒流の流れる太平洋から冷たい風が常に吹きつけるため、夏でもジャケットが手放せない。しかし、そこから約1時間、車で南下して到着するシリコンバレーの町、サンタクララは秋が深まっても昼間なら半袖で屋外のベンチでうたた寝できるほど温かい。

クリア・タッチ(Clr Touch):手元30センチメディアに適した映像表現

クリア・タッチのマーク・スペイツCEO

 半導体メーカーのインテルの本社もあるこの町で開かれた新進気鋭のベンチャー企業が集まるコンファレンス「DEMO(デモ)」に参加した。ここで、「Clr Touch(クリア・タッチ)」という企業と出合った。

 彼らは、動画やテキスト、画像などをインターネットから集め、好きなようにコラージュできる仕組みを作っている。動画が映っている画面に、貼り付けた画像が現れたり、テキストが飛び出したりする。作品を作るのも、できた作品を見るのも無料だ。

 似たようなサービスにタンブラー(Tumblr)があるが、クリア・タッチは、よりタブレットに特化している。あるいは、動画や画像を加工できるユーチューブをイメージしてくれればよい。

 同社のマーク・スペイツ(Mark Spates)最高経営責任者(CEO)は、「タブレット機器向きに格好よくコンテンツを作れるプラットフォームは表現の可能性を変える」と言っていた。

 小さな画面を持つアイパッド(iPad)などのタブレット機器が、これからのコンテンツ消費のメーン機器になると考えているのだ。

 「テレビは3メートル離れ、パソコンは30センチで見るメディアだ」という話を10年前よく聞いた。手元の小さな画面で映像を見られる今、テレビ局や映画会社は新たな映像表現の可能性を追求すべきなのだろうか。

 既に我々は、テレビやインターネットで動画とテキストが組み合わさった表現に慣れ親しんでいる。しかし、テレビのテロップやインターネットサイトのテキスト情報は、いわばアート作品のタイトルと同じで、伝えたいことの補助手段でしかない。

 タイトルを見ないと作り手の意思が伝わらない作品は、成功作と言えないだろう。

 一緒にいたベンチャーキャピタリストは、「私は映像よりテキストで情報を取る。なぜなら、テキストの方が短時間に多くの情報を取れるから」なんてことを言う。