(堀場製作所・前編はこちら)

 堀場製作所は、前身の堀場無線研究所創設から今日まで本社を京都に構えています。世界各国に拠点を持つ現在も、京都から動こうとしません。それは、京都には「長い間、オリジナリティを維持しながら成長していく風土」があるからだといいます。

京都にこだわり続けるわけ

 京都では、2番手、3番手には全く意味がありません。コピーは恥だという文化があるのです。だから堀場製作所は、“これまでにない計測機器を開発・製造する” 会社にこだわっています。堀場社長には、「一流のものを作るには、一流のものを知る必要がある」という持論があります。

 食事に例えて「吸い物は、器が大事です。一流の職人が作った吸い物を、一流の器に入れることで、初めて本当の味が分かるのです」と穏やかに言います。こうした感覚が、ものづくりにはもちろん、会社が世界に飛躍するために役立っているというのです。

 「例えば、フランス人を動かそうとすれば、まず日本料理のレベルが高いことを認知させることが重要です。彼らは仕事内容や待遇だけでは動きません。韓国においても、韓国の食を韓国の人とともに食べ、理解することで、結果的にビジネスがうまくいきました。日本の企業は、海外でも仕事一本でビジネスをリードできると考えがちです。しかし、日本がマネジメントで世界をリードしようと考えたら、他国の文化に対する深い理解がなければ絶対に無理でしょう」とのことです。

 良いものを知ること、文化を大切にすることの大切さは、社員に対しても日々発信されています。例えば、贅沢に走ってはいけないが、社員が食べる食事は絶対においしくなければならないとされています。それだから社内の食堂で本格寿司職人が握った寿司を食べることもできます。

従業員の誕生会は最高の食事でもてなす

 また、経営幹部がホストとなって開催する従業員の誕生会では、費用はかかっても絶対に安物ではなく、ホテルのケータリング料理でもてなされます。ここでも「従業員一人ひとりに目配りをしている、大切にしているんですよ」という同社の配慮は行き渡っています。

 とかく労使間には目に見えない壁がつきものですが、「ブラックジャック・プロジェクト」での従業員と経営幹部の意見の交流と同様に、ここでも幹部がホストとなってもてなすことで、従業員と幹部の交流が自然と行われるようになっています。

 「経営幹部と身近に話ができるのでとてもいい機会だと思っている」という従業員の感想に表れているように、同社では、経営幹部と従業員の距離が近いことも、『おもしろおかしく』働けることの要因になっているようです。

 さらに、社員に良いものをという考え方は、「社員が思わず行きたくなるような研修施設」にも表れています。研修施設「FUN HOUSE」はリゾートホテル風のおしゃれな造り。内部には暖炉があり、そこで炎を囲んで研修者同士がコミュニケーションを取ります。暖炉は単に暖房としての機能ではなく、「本物の火」を囲むことにこだわって作られました。

 そこでは “研修のための研修” は行われず、基本的には自主研修が主体。それなのに、ピーク時には月に700人が利用します。