「本流トヨタ方式の土台にある哲学」について、「(その1)人間性尊重」「(その2)諸行無常」「(その3)共存共栄」「(その4)現地現物」という4項目に分けて説明しています。
今回からは「(その2)諸行無常」について考えてみましょう。
ここで考える「諸行無常」というのは、高邁な哲学を言うのではありません。実務家にとっては、あらゆるものが時間と共に変化するということです。
天候で言えば、例年より暑かったり寒かったり、日照りになったりします。現場で言えば、人は入れ替わり、設備は劣化し、作る製品も変わります。経営環境で言えば、景気は良くなったり悪くなったりします。
このような変化をどう捉え、どのような対応をすればよいのかを、次のような項目に分けて一緒に考えていきたいと思います。
<1>諸行無常と日本人
<2>自分の城は自分で守れ
<3>標準作業時間とは何か
<4>2007年問題は解決したか
<5>企業は生き物、鍛えなければ衰える
<6>今日は明日のためにある
今回は、「<1>諸行無常と日本人」についてお話ししましょう。
予測できない自然災害に見舞われてきた日本人
東アジアに位置する日本には、春夏秋冬の明確な四季があります。四季折々の美しい花が咲きますが、天候は穏やかな日だけではありません。冬は強烈な北風が吹き、日本海側に大雪が降ります。夏は南風が吹き、日本海側はフェーン現象で高温になります。南風が弱いと気温が上がらず、米の収穫が落ちます。
春は天候が不安定で、霜の害を受けることがあります。夏から秋にかけては台風が来ます。台風が来ないと、旱魃被害が起きることもあります。さらに、地震や火山の爆発がいつ起こるとも知れない国でもあるのです。
日本人は予測のつかない災害に遭う機会が多かったためか、仏教の教えである「諸行無常」の考え方が心の奥底に染み込んでいったものと思います。