『おもしろおかしく』という創業者の思いを社是に掲げ、社員が働きやすい環境をつくり続けているのが、創業以来京都に本社を置く堀場製作所です。『おもしろおかしく』仕事をするために、業務改革運動をイベント化したり、目標管理制度を組織内コミュニケーションに活用したりするなど、その活動は極めてユニークなものです。
創業25年目に定められた社是
堀場製作所は、終戦間もない1945年10月、現最高顧問の堀場雅夫氏が京都市下京区に設立した私設研究所「堀場無線研究所」が前身です。そもそもは堀場氏が京大在学中に行っていた原子核物理の研究を継続するための研究所でしたが、運営費を賄うために家電の修理やエレクトロニクス製品の開発などを行うようになりました。
紆余曲折がありながらもpHメーター(水分析測定器)で大ヒット商品を生み出し、pHメーター事業を本格化させるために、株式会社堀場製作所として新たなスタートを切ったのです。1953年のことでした。
その後、経営者として、そして技術者として同社を世界規模の企業に育て上げるのですが、その成長の背景にあったのが『おもしろおかしく』ものづくりをするということでした。
日本のものづくりの原点は、物事への興味です。こんなものを作りたい、こんなものがあったら便利だ、誰も作ったことのないものを最初に生み出す――。そうしたワクワクする気持ちを大切にしてきたのが日本のものづくりの根底にあります。
まさに堀場氏は日本のものづくりの原点を素直に『おもしろおかしく』という言葉に表したのでしょう。その『おもしろおかしく』が堀場製作所の社是として定められたのは、1978年。創業者の雅夫氏が代表取締役会長に就任した、創業25周年の節目の時でした。
義務感で働いても競争力ある商品は生まれない
企業の社是としては、極めてユニークなものです。そのため役員会での反発もあったといいます。しかし、結果的に「独創的なアイデア、競争力のある商品は義務感からは生まれない。ワクワクするような環境から生まれるのだ」という創業者の強い思いが通りました。
そして現在では、『おもしろおかしく』と、それを英訳した『JOY and FUN』が世界23カ国5000人を超える社員に浸透しています。
同社は、技術力や人材などの「見えない資産」を活用することで成長してきました。特に近年、自動車・煙道排ガス測定、大気汚染、水質汚濁モニタリングなどの分野では世界市場で強みを発揮しています。
その源である「見えない資産」を育み、精神的な支柱となっているのが社是である『おもしろおかしく』です。