2009年8月、調査のために訪問したエジプトで、期せずして国営放送のニュース番組に出演した。
カイロ滞在最終日の夜の生放送番組に、インタビューゲストとして迎えられた。当日まで何の打ち合わせもなく、本番30分前にようやく番組内容を説明されるという、何ともいい加減な番組作り。テレビの世界もアラブペースなのかと妙に感心してしまった。
インタビューの主題は「日本とアラブ・イスラム圏との相互理解」だった。
キャスターから「欧州ではイスラムを嫌悪したり、敵対する(=イスラムフォビア)言動が見られるが、日本でも同じなのか」、「どうしたら日本人に、我々がテロリストなんかではないということを分かってもらえるだろうか」といった問いかけを受けた。
イスラム移民の多いヨーロッパと違い、日本では日常生活でイスラムと接する機会がほとんどない。このため、「敵対」「嫌悪」というほど強い感情を抱くことはないが、どちらかと言えばネガティブなイメージが定着していることは否定できない。
思い浮かぶ人物はビンラディンとサダム・フセイン
筆者は、大学で「宗教と国際政治」という講義を担当している。毎年、第1回目の授業では、イスラムやアラブのイメージについてのアンケートを実施している。結果は、毎年ほとんど同じだ。
学生がイスラムから思い浮かべるのは、「厳しい戒律」「排他的」「怖い」「危険」「テロや戦争」といったキーワードであり、これだけで全体の70%以上を占める。人物名では、ウサマ・ビンラディンとサダム・フセインの2人でやはり70%以上を占めた。