2009年10月21日、日本郵政新社長に元大蔵省(現財務省)事務次官の斎藤次郎(73)が内定すると、政界は大きくどよめいた。「脱官僚依存に矛盾」「究極の天下り」「完全に民から官だ」――。すかさず野党・自民党は批判の集中砲火を浴びせた。
一方、2010年度当初予算一般会計の概算要求額は過去最大の95兆円に膨らんだ。今後どれだけ削り込めるかが焦点だが、税収40兆円割れの可能性もあり、赤字国債増発は避けられそうにない。鳩山政権に対する世論の期待は依然高いが、失望感もそろそろ出始めている。「税金のムダづかいと天下りを根絶する」と掲げた民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)は骨抜きになってしまうのか。(敬称略)
鳩山内閣発足から既に1カ月が過ぎたが、依然として内閣支持率は7割前後の高水準。10月19日付の日本経済新聞によると、支持率73%に対して不支持率は21%。政党支持率は民主55%、自民21%とその差は倍以上ある。
同日付の毎日新聞調査でも支持率72%、不支持率は17%。民主の政党支持率も40%と自民14%の3倍近い。内閣支持率はそれぞれ政権発足当初より数ポイント下がったとはいえ、鳩山政権に対し世論は高い期待感を示している。
だが、大物官僚OBを起用した今回の日本郵政社長人事によって、内閣の支持率は今後じわじわ下がり続けるだろう。
復活遂げた「10年に1人の大物」、「天下り」にあらず?
「元官僚という意識はない」「わたし自身は天下りという認識はない」――。10月21日、日本郵政の新社長に内定した東京金融取引所社長の斎藤は記者会見で、天下り批判にこう反論した。
そうは言っても、斎藤は大蔵事務次官時代に「10年に1人の大物」と言われ、民主党幹事長の小沢一郎と極めて親密。細川護熙政権当時は小沢と連携して、消費税率を7%へ引き上げる国民福祉税構想を推進した中心人物だった。
今回の人事は、金融・郵政改革担当相の亀井静香が小沢に配慮して「小沢人脈」の中から決めたものとみられる。亀井には、郵政民営化見直しに向けて与党内で「小沢―亀井」ラインをがっちり築き、小沢の後押しを得たいとの思惑があったはずだ。