先週、ベルリン名物として知る人ぞ知るケチャップソーセージ「カレーヴルスト」のお話を少し紹介しました。
今回は、このカレーヴルストにちょっと注目してみたいと思います。というのも、実はこの、今では町の誰もが見慣れたどうということのないファストフードに、実は20世紀の人類史が結晶しており、さらにその向こう側に私たち日本人の顔も見えてくると思うからなのです。
カレーヴルストとは何か?
まず、食べ物が分からなければ話が始まりませんので、ベルリンのカレーソーセージについてご説明しましょう。
ちょうどお好み焼きを焼くような、平たい鉄板に油を1センチくらい張ったところに、ソーセージを並べて、焼くというよりは揚げる感じで火を通します。
表面がパリパリして香ばしく焼き上がるわけです。
で、これを紙などの皿に上げ、カレー粉を一振り。次いで、けっこう「これでもか!」というほど、ケチャップのようなトマトソースをかけます。
日本人の感覚からは明らかに多すぎるケチャップですが、実は結構量が食べられるよう、味付けは薄く工夫されています。
その上から最後にもう一振り、カレー粉をかけて出来上がり。これがベルリン名物カレーヴルストというもので、食べつけてしまうと、なんとなく時々食べたいような気もしますが、率直に、頬っぺたが落ちるほど美味しいというものではないと思います。
ところがこれ、マクドナルド効果というのか、小さい時から食べてる人は、どうも間食で、午前や午後の小腹の空く時間帯など、ちょっと街中で立ち食いしたくなるモノらしいんですね。
カレーヴルストの屋台はベルリン中に無数にありますが、夕方などはだいたい前に人が立って食べている。それだけたくさんあってもつぶれるようには見えない。消費が確保されているわけです。
カレーヴルストこと始め
さてこのカレーヴルスト、実はそんなに昔に生まれたものではありません。と言うより、正確に誕生した日付まで分かっています。
1949年9月4日、ベルリンでソーセージなどの屋台を営業していたへルタ・ホイヴァーは客足も少ないので早めに店じまいして、新しい料理の工夫を考えました。
なにせモノのない時代で、材料は限られています。たまたま手に入ったカレー粉、トマトの缶詰に「秘密のX」をいろいろ加え、数十種類のソース、料理の仕上げ方などを試してみた。カレー粉は混ぜてしまうと量を消費する割りに香りも味も立たない。